方向がずれている

 ジュニア防災検定なるものが始まったんだとさ。ニュースはこちら。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131208/t10013668531000.html
 財団法人のホームページはここ。
http://www.jbk.jp.net/
 子供たちが、防災の知識を身に着けること自体は悪いことではない。どんどんと勉強をして災害に強くなってもらいたい。しかし、知識一辺倒になってしまっても困りものだ。検定がマニュアル化されて、検定に受かること、それが子供たちの目標になってしまってはいけない。災害から生き残ること、これが最終目標になるようにカリキュラムを組んでほしい。
 たとえば、こんな問題が出されたそうな。
「4段の棚があります。そこにビン、プラスチック容器、本、タオルの四種類を収納します。どの棚に入れたらいいでしょうか?」
 答えは、一番下にビン、その上に本、3段目にプラスチック容器、最上段にタオル、が正解なんだとさ。
 う〜む、そうなのかなぁ……それでもいいのだけれど、それだけでもないと思う。災害時、あるいは防災において、こういった固定観念を植え付けるのはよくない。
 棚自体の耐震化はできているのだろうか?できていないとすれば、重量のある本を一番下にもってくるのが、安定するので正しい。また、ビンなどは地震時に倒れて、割れる可能性が高いので、そもそも本棚が置いてあるような、リビングから片づけておくのが正解だろう。
 財団法人の「推薦図書」
http://www.jbk.jp.net/recommen.html
のラインナップにもある『命を守る教育』の著者で、「釜石の奇跡」を起こした群馬大学の片田敏孝教授がこのことを強く主張されている。
「想定にとらわれるな」
 ということである。このことを説明した部分を『人が死なない防災』(集英社新書)から引く。
《もう一つの間違いは、「知識の防災教育」です。学校の先生方は、多くの場合、「ちゃんとした知識を与えて、合理的な行動を導こう」という考え方をされます。これは一見正しいようですが、防災に関してはダメです。与えられる知識は、主体的な姿勢を醸成しないからです。また、知識を与えられることによって災害のイメージを固定化し、その災害イメージを最大値にしようとします。それが「想定にとらわれる」ことにつながってしまう。》
この財団法人が「漢字検定」が大儲けしているのでそれにあやかろうとした、なんて思いませんよ(笑)。でもね、この財団法人がやろうとしていることは、まさに片田教授が指摘する「知識の防災教育」に他ならない。これは子供たちに「固定観念」を植え付けるものでしかないし、残念ながらこの検定で釜石の奇跡が再現されるとは、思えないなぁ。