中宮寺

みほとけ の あご と ひぢ とに あまでら の
あさ の ひかり の ともしきろ かも

 歌意は「弥勒菩薩様の顎と肘のあたりに、尼寺から差してくるかすかな朝の光が、なつかしく心ひかれることだなぁ」というようなところだろう。
 尼寺から入ってくるのは朝日だけだろうか。あるいは朝餉の用意の、米の焦げた匂い、味噌の香なども菩薩様の顎のあたりに漂っていたのかもしれない。菩薩様の静かなお目覚めの瞬間を切り取ったいい歌である。
 昨年12月に中宮寺を訪う予定だった。この菩薩様にも久々にお会いできるはずだったのだが、ちょいと体調を崩してそれが叶わなかった。残念でならない。
 もう一度行きたいなぁ。できれば朝早く靄がかかっているくらいの頃に、顎と肘に朝日をうけて輝いておられる菩薩様にお会いしたい。

 歌人會津八一の命日に、庭の枯れ枝にさす朝の光を見てそんなことを思った。