暑い日には絵画鑑賞

 昨日、金山のボストン美術館に行く。今、ボストン美術館では、「日本美術の至宝」展の前期が開催中。ワシャとしては、「平治物語絵巻」と曽我蕭白の「雲龍図」がお目当てだった。この二つの実物が鑑賞できれば、他はどうでもよろしい。そんな気分だった。
 ところがどっこい。ボストン美術館はあなどれぬ。のっけから狩野芳崖である。「江流百里図」劇画のワンシーンを切り取ったような強い輪郭線で書かれた墨絵だ。
http://www.mfa.org/collections/object/landscape-scenes-along-the-river-37145
 ワシャはもともと狩野芳崖が好きだった。きっかけは福井県立美術館にある「伏龍羅漢図」である。15年くらい前だったかなぁ。朝日新聞の日曜版に「伏龍羅漢図」がカラーで載っていた。飲み過ぎた次の日で、朝まだ頭がもうろうとしている時にこの絵
ef.fukui.jp/detail.php?stype=top&data_id=1320
を見た。
 羅漢が崖の岩に腰を下ろし、その膝に眠る龍を抱いている。いずれ龍は天に昇っていくのだろうが、今は雌伏のときである。羅漢に守られながら、力を蓄えているのだ。
 この龍の鱗がきめ細かい。朝の光の加減だろうか、鱗に覆われた胴がゾロリと動いたのである。ワシャはあわてて見直したのだが、二度と動かなかった。
 そんな体験があって、狩野芳崖という画家を知ることになった。もちろん、原画が観たくなり、早い時期に福井県立美術館まで足を運んだ。そして現物と対面したわけだが、その時は酔っていなかったのだが、眼鏡の曇りを拭こうと思って外す瞬間に、やはりゾロリと龍が蠢いた。名画は動く、これはこの時に確信したことである。

 その後、大迫力の「馬頭観音菩薩像」、優美な色彩の「一字金輪像」など日本にあれば、国宝級の仏画がならぶ。
 そしてこのコーナーの次が「二大絵巻」が展示されているスペースだった。先に「吉備大臣入唐絵巻(きびのおとどにっとうえまき)」である。当初のワシャの目的は「平治物語絵巻」だったのだが、この「入唐絵巻」にやられてしまった。
 物語は、日本から勉強のために唐に渡った吉備大臣が唐人からいろいろな迫害を受ける。それを鬼となった阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)とともに克服していくというサクセスストーリーの一種なのだが、主人公の吉備大臣を助ける鬼の仲麻呂がとてもかわいいキャラなんですよ。二人そろって正座したまま天を走る姿は、現在のギャグ漫画のルーツのようだ。思わず見入ってしまった。
(つづく)