文楽がおもしろい

 昨日、岡崎で「平成25年度文楽地方公演」があった。演目は、昼の部で「生写朝顔話」(しょううつしあさがおばなし)。会場は、岡崎せきれいホール(500席)が8割がた埋まっていただろうか。
 それにしても文楽協会はがんばっている。なんとか21世紀に生き残っていこうと必死に努力を重ねる。例えば、「G・マーク」の導入だ。舞台下手側に、縦長の電光掲示板を設置した。ここに浄瑠璃が文字で流れる。いわゆるオペラの字幕と同じものである。「字幕」=「G・マーク」ということ。これは初心者には解かりやすい。
 また、浄瑠璃の中にギャグを臭くならない程度に織り交ぜたのもよかった。例えば、「笑い薬の段」で、悪徳医者が用意した茶に、毒が入っているのではないかと善人が指摘すると、医者は、「それでは自分が毒見をしよう」と言い、その後に続くセリフ。
「ヲヲさうあらうさうあらう。その代り、何事もない時は、倍返しだぞ。その分では済まさぬが合点かや」
 あるいは、笑い薬を飲んでしまい、笑い転げる医者が善人にこう懇願する。
「アハハハハコリヤ亭主。この辺に医者はないか(中略)コリヤ徳右衛門。早くどうか医者を呼んで来てくれい。いつ呼ぶか?今でしょ」
 といった具合だ。
 もちろん会場は爆笑の渦となった。こういった試みはとてもいい。若い人たちにも取っつきやすいと思う。そもそも文楽は庶民の娯楽である。けして小難しい伝統文化ではない。それぞれの時代にあった変化を遂げながら、次の世代に繋いでいくことが重要だろう。
 文楽ほど肌理が細かく、かつ大仕掛けな人形劇は世界中を探しても、ない。笑い、泣き、怒り、それぞれの人形が細かな感情を発露する。こんな素晴らしいものを、さりげなく持っている日本が大好きだ。