板付

 ワシャは板に付いたものが好きだ。それは蒲鉾から歌舞伎、演劇、落語に至るまで、板付き、板の上でやるものはみんな好物と言っていい。板付と名がついているので、板付空港も好きなくらいですぞ(笑)。
 さて、歌舞伎である。このところ看板役者の退場が続き板の上に役者が不足している。伝統文化評論家の岩下尚史先生は、「新潮45」で、看板がいなくなっても大丈夫だと太鼓判を押していたけれど、空証文になってしまったね。いいなぁ評論家って何の責任もなくって。
 おそらくこの冬の時代を抜け出すには、あと10年はかかると思う。歌舞伎ファンはその間、じっといい子で待つのだった。
 前も書いたけれど文楽はいい。人形劇というところでオーバーなアクションをつくることができ、これが観客を喜ばせる。最近、字幕を取り入れ浄瑠璃も理解しやすくした。伝統は伝統であるが、その枠内に納まるなら変更もありだと思う。前説、字幕などで文楽は再び脚光を浴びようとしている。
 落語ももう大丈夫だ。テレビに出てタレント活動をしているようなのもいれば、地道に寄席や地方で腕を磨いている噺家も増えている。どちらも頑張ってくれればいいのだ。観客を爆笑のうずに巻き込んでくれればいい。
 バレエもいいですね。先日、愛知県芸術劇場大ホールに掛かった「ロミオとジュリエット」である。英国ロイヤル・バレエ団のクオリティの高いこと。ジュリエットのサラ・ラム
http://www.nbs.or.jp/blog/0807_royal/contents/2008/03/post-1.html
の繊細でかつ大胆なおどりには感動した。またロミオ役のスティーヴン・マックレーの鍛え抜かれた足から繰り出されるジャンプや回転は切れ味が最高だった。
 たまたま友だちに聞いたのだが、日本人は、中学生くらいになると、バレエから離れてしまう男子が多いのだという。その理由はというと、バレエってなぜか男優は下半身タイツですよね。上着はきちっとした着物を着用している。あるいはマントまで羽織ることさえある。にも関わらず、下半身はタイツモッコリなのである。これは思春期の男の子には厳しい。同級生にバレエの発表会などを見られた日にはもう目もあてられませんぜ。翌日からあだ名は「モッコリマン」とかになってしまう。だから中学生のバレエ人口が急速に減少するのだそうな。
 もちろんバレエにはバレエの理由がある。「動きやすく、足捌きを美しく魅せられる」利点は大きい。躍動する筋肉は美しいし、芸術的である。歌舞伎が隈取をするように、下半身をモッコリするのである。でもね、ここさえなんとかすればバレエの中学男子の人口も増えていくと思うのだが……。モッコリ程度でバレエの道を諦めるようじゃそもそもモノにならないのかもしれないが。