また岡崎かよ

 岡崎の「せきれいホール」という会館で文楽があった。ワシャは板についたものは蒲鉾から歌舞伎までジャンルを問わず好きなので文楽仲間と出かけた。出し物は「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)。いわゆる645年の大化の改新を、江戸期のお家騒動風に創作してある。
「妹背山」というのは「妹山」「背山」という二つの山を指している。妹が女で背が男、この長い物語の前段の悲劇の主人公である雛鳥(ひなどり)と清舟(きよふね)のこと。
「婦女庭訓」は「女性の道徳」というような意味。これは後段の主人公のお三輪が、反逆者の曾我入鹿討滅のために、自らの血を提供する。このことが「道徳的である」ということで祭り上げられた。ごくごく簡単に言えば、そういった物語を象徴した題となっている。
 文楽はおもしろかった。もちろん限られた時間の中なので、すべての浄瑠璃は聴けない。後段のお三輪の悲劇に限定してある。前段と切り離しても物語としては独立しているのでそこだけで大丈夫なのだ。
 なにしろ舞台から5列目なので人形を間近に見ることができた。憂いを湛えて小刻みに震えるお三輪は「生きているのか!」と勘違いするほど生々しかった。桐竹勘十郎の名人芸である。太夫、三味線もすぐ横くらいの位置だったので、息継ぎも判るくらいの臨場感で迫力満点だった。う〜む、やっぱりライブに限る。
 浄瑠璃、三味線も久しぶりだったので、音楽が心地よく、前の日に眠れなかったこともあって、ついつい夢の世界に誘われてしまった。
 あ〜楽しかった。