カラスの勘三郎

 数日前から、早朝のウオーキングを再開した。熱波が日本列島に襲来して以来、身の危険を感じ、止めていたのだ。このところ朝夕の気温が下がってきて、なかなか心地よろしい。虫の集(すだ)きにも誘われて歩きはじめた。
 とはいっても夏は夏、午前7時の太陽といっても、もうすでに烈火である。腕や首筋がじりじりと焼かれているのがわかる。それでも家の影や木陰にはいると涼しい風に癒される。タオルで汗をぬぐいながら、保水を怠らない。
 前にも言いましたっけ。ワシャのウオーキングは変則である。ワシャは流星号と呼んでいる自転車を押しながら歩く。これがけっこうワシャの仲間では流行っていて、通勤の時に自転車押しウオーキングをしているヤツをちょくちょく見かけますぞ。
 自転車ウオーキングのいい点は、自転車の前カゴに荷物をたくさん入れられることである。本なら20冊ははいるだろう。もちろん早朝ウオーキングにはそんなに持っていかない。常には『日本史小典』(日正社)とお経をプリントしたものを持ち歩いている。今日は、小堀桂一郎靖国神社と日本人』(PHP新書)も持参した。それに保水用のペットボトルとタオル、シェーバーなども入っている。
 この状態で田んぼの中の農道をひたすら歩くのである。今日は小さなカナヘビとミヤマアカネに出遭った。雀、カラス、シラサギはいつも田んぼの中にいるので珍しくもない。ワシャがシェーバーの音を立てて、道を進むと、最初に雀が散っていき、その次がシラサギだ。カラスはふてぶてしく、最後の最後まで退きやがらねぇ。カラスなんぞにバカにされては寝覚めが悪い。だから「ワッ!」と大声を出してやると、あわてて逃げていくのだった。
 しかし、今朝、一羽だけ飛び立たずに、ずっとワシャを睨んでいたカラスがいた。あいつがカラスの親分だな。しばしの間、ワシャとカラスの間で火花が飛んだが、まもなくカラスの親分は悠々と飛び去っていった。なんだか悔しいなぁ。
 それでも小一時間歩いたら、汗だくだくで、早速シャワーを浴びてさっぱりしたのだった。明日こそ、カラスの親分と勝負をつけねばなるまい。