狂気の蔵書家というのはけっこういるものらしい。この本に登場してくる人たちは、ううむ、生半可ではないですぞ。3万冊の本に行く手を阻まれ、風呂に閉じ込められてしまった蔵書家とか、収入の7割を本代に費やす評論家とか……。
こういう異常な人たちの話を読むと、少しほっとするのだった。
『蔵書の苦しみ』の著者の岡崎武志さんは言う。
「本を際限なく溜め込む人は人は、個人差はあるだろうけど、どこか真っ当な人生を投げてしまっているのではないか」
じぇじぇじぇ。
『蔵書の苦しみ』の中には、司馬遼太郎と谷沢永一との交流についても書いている。谷沢は阪神淡路大震災で被災した。その際に谷沢の蔵書類も被害を受けた。その惨状を「産経新聞」に書いたところ、司馬遼太郎が速達で、見舞いと書庫の後始末について適切な処置を教えてくれたのだそうだ。
《書庫の大混乱は「いのちを掻きまわされたようなものでしょう」と、蔵書家の心底を見通した心情あふれる挨拶に始まり、いったんは他人の手を借りて修復し、暖かくなってから、自らの手で整理を「気永になさればどうでしょう」と勧めた。》
13万冊の谷沢さんの蔵書もすごいが、おそらく司馬さんの蔵書はその上をいくものだったに違いない。司馬さんの蔵書の一部が、司馬遼太郎記念館に公開されているが、行かれたかたはご存知のとおり「圧巻」である。それで一部なのだから想像を絶するスケールと言っていい。
ご両所に比べれば、ささやかな冊数しかないけれど、散らかっているので、そろそろ書庫の整理でも始めますかな……って、毎週毎週ずっと整理整頓をしているのだが、ちっとも整然としないから悲しいのだけれど。