「令和」のはじまりに際して

 居住まいを正して、朝から書庫で本を探している。せっかく「令和」の初日なので、ここは皇室関係の本を読んで、なにか見つけようと思ったのじゃ。

 ワシャは、歴史・文化・伝統を重んずる上品な保守なので、皇室に関わる本はけっこう持っている。『昭和天皇実録』(東京書籍)は16巻に及ぶし、その他にも『昭和天皇伝』(文藝春秋)、『昭和天皇巡幸』(創芸社)、『昭和天皇』(文藝春秋)、『昭和天皇独白録』(文藝春秋)、『摘録[天声人語]昭和天皇』(朝日新聞社)などなど、昭和天皇についてはかなりの資料がある。コミックまで揃っている。

 しかし上皇陛下の書籍となると、ワシャの書棚にはいささかさみしい。見つかったのは、『道 天皇陛下 御即位十年記念記録集』(NHK出版)だけだった。上皇后陛下に関しては『皇后陛下お言葉集 歩み』(海竜社)、『橋をかける』(文春文庫)、『皇后さまのうた』(朝日文庫)が見つかった。

 上皇陛下におかれても、いずれ「お言葉集」などが出されるだろうから、それを楽しみに待ちたい。

 あ!こんな本も見つけましたぞ。『テムズとともに』(学習院教養新書)である。著者は「徳仁親王」とある。「なるひとしんのう」つまり「今上陛下」の著作である。ずいぶん前に入手してサラサラと目を通しただけなので、それほど鮮明に覚えていないけれど、今上陛下が昭和の時代にオックスフォードに留学された際の、思い出の書であった。なにしろ、当時の徳仁親王殿下のおやさしい人柄がにじみ出ているような記憶がある。

 

 そういう本はあるけれど、上皇陛下に関わる本がない。ワシャは諦めが悪いので、それでも書庫の中で苦戦していると、『文藝春秋』の「90周年記念特別編集本」を見つけた。表紙は徳仁親王をお抱きあそばす「美智子皇太子妃殿下」、裏表紙は「昭和天皇」と、ここでも表に出てくるのはこのご両所で、ワシャの蔵書と同様に美智子様昭和天皇の輝きが強いために上皇陛下が見えにくいのかなぁ……と思ってしまう。でもね、この雑誌の後段にある「東日本大震災」の先の天皇皇后両陛下の活動記録には目頭が熱くなった。ここまで日本国民のことを考えておられるのか。

 いずれ、太上天皇陛下についてもいろいろな書籍が出版されることであろう。いや、すでに何冊も出ているのだろう。そういった書籍をそろそろと集めようかと思っている。

 平成はついに「無職」で終わったけれど、令和に入って「再就職先」も決まった。本くらい買う収入はあるだろう。がんばって平成の御世を治められた天皇のことを勉強するど~!

 

 それから拾い物がひとつあった。「90周年記念特別編集本」の巻末に4人の識者によるシンポジウムの記録が載っていたのだ。一人は司馬遼太郎、これだけでもめっけもんだった。そして福田恒存、こんなところにもいたんですね。その他に山崎正和林健太郎が加わっている。

 ワシャとしては、司馬さんと福田さんのやりとりがおもしろく、ここを夢中になって読んでしまった。

 令和初日から司馬遼太郎福田恒存と邂逅するとは、こいつぁのっけから縁起がいいわぇ。チョーン(柝の音)。