思わず拝んでしまった

 イチローは塁上でヘルメットを脱いで深々と頭を下げた。その頭は高校野球の選手のように、あるいは出家のように丸められている。
 まさにイチローはひたすら道を求める修行僧のようだった。その神々しい姿にワシャは思わず手を合わせたのである。チ〜ン。

 ヒット・キングのピート・ローズは称賛をしながらも「大リーグの4000本と日米通算の4000本では価値が違う」といかにもヤンキー臭いコメントをだした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130822-00000039-asahi-base
 だったらワールドシリーズアメリカが日本に敗けているのはなぜだろう。
大リーグとプロ野球では試合数にも差があるし、移動距離も大きく違っている。だから、単純に比較するなと言う。そうかもしれないが文化も風土も価値観も違う異国に行って試合をするのだって大変なプレッシャーで、自国でのうのうとベースボールを遣っている連中はずいぶん楽だと思うけれど。
 ピート・ローズの大記録にケチをつけるものではないけれど、多分、ピート・ローズは生業としてヒットを量産してきた。それに比べイチローは道としてヒットを打ってきた。おそらく両者が年齢を重ねていくと、「生業」と「道」の差はいろいろな部分で違ったものになると思う。例えばピート・ローズはただの爺さんになってしまったが、イチローは稀代の剣客、至宝の名僧に成り得るのではないだろうか。

 2004年に大リーグの安打記録を達成した時の言葉。
「満足の基準は、少なくとも、誰かに勝ったときではありません。自分が定めたものを達成したときに、でてくるものです」
 イチローがさりげなく言った言葉だが……重い。

 テレビを介してだけれども、天才の発した言葉に生で触れられるのは幸福である。これは弘法大師宮本武蔵と同時代に生きているくらいにうれしい。あくまでもワシャにとってということですけどね。