不活動宗教法人

 夕べのNHK「クローズアップ現代」で、「出家詐欺」が取り上げられていた。経済的に立ち行かなくなった寺で、多重債務者が得度をさせてもらう。名前を法名に変えて、債務から逃れるためである。あるいは、名前を変えたことで、さらに銀行から住宅ローンの融資を受けてドロンしてしまう、というようなこともあるそうだ。銀行から引っ張った金は、住職、多重債務者、ブローカーで山分けとなる。
 このことに危機感をもった臨済宗妙心寺派は、プロジェクトチームを編成し、こういった犯罪の温床になりやすい不活動宗教法人の整理を始めたという。

 このところワシャは禅の本を読んでいる。その中にはいろいろな名僧も数多く出てくる。名僧ではなくとも、永平寺総持寺妙心寺などで立ち働く雲水たちのきびきびとした仕草は見ていて美しい。
 出家詐欺に関わった僧も妙心寺で修行をしているはず。一時は坐禅の向こうに何かが見えていたのだろう。それが濁世にもどってしまえば、金に困り、犯罪の片棒を担ぐはめになる。
 日本人が寺から離れて久しい。皆さん、最近、観光以外で寺院に足を運び、手を合わせたことがありますか。近所の寺の住職に尊崇の念をもって接していますか。
 そもそも寺を支える檀家制度が崩壊しつつあるのだから、寺だけを存続させていくというはかなり難しい。観光収入がある寺や巨大な教団はなんとかやりくりをしていけるのだろうが、地方の小さな禅寺などは、やりくりに困っているのだろうなぁ。

 フーテンの寅が備中高梁蓮台寺でにわか坊主になるのは、第32作「口笛を吹く寅次郎」だった。跡取りのいない蓮台寺に寅次郎が納所坊主として転がり込むのだが、映画から30年経ってみれば、笑えないブラックジョークになってしまった。
 日本の仏教文化そのものが、大きな転換点をむかえている。そんな気がする。