3月12日、愛知県・三重県沖の海底からメタンハイドレートが掘削された。象徴的に炎が点灯され、いかにも夢のエネルギーが手に入ったかのような錯覚に陥る。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130312/k10013148901000.html
でもね、手放しで喜んではいけない。今朝の朝日新聞では、「コストが大きな壁」と書いている。それもあるだろう。しかし、根本的なことはコストではない。コストは石油や天然ガスの値段が相対的に上昇すれば逆転する可能性があるからである。
問題はね、「EPR(energy profit ratio)」エネルギー収支比率のほうである。どれだけのエネルギーを費やせばどれだけのエネルギーが得られるか、ということなのだ。
ジェームス・ディーンが主演した「ジャイアンツ」という映画で、油井を掘り当てて、真っ黒な石油が吹き出すシーンがあったでしょ。穴さえ開ければ勝手に噴出する石油のEPRは100を超えている。つまり1のえねりぎーで100以上のエネルギーが入手することができた。
ところが、メタンハイドレートはこのEPRは1を切っている。1を下回っているということは、エネルギーを取り出せば取り出すほどエネルギーを消費してしまうということになる。つまり掘削しないほうがいい、まさに「夢のエネルギー」なのである。
三重県知事は、「たいへん期待している。三重県では地域活性化に結びつけたいと今月中にも関係者による研究会を立ち上げようと考えている」と言っている。
三重県知事、少し軽躁なところが見受けられる人物だが、これは少々あわて過ぎ。
県内の港への天然ガスの陸揚げを想定したり、環境作りや産業振興策の検討を始めても、そもそも実現すら危ういのである。そういったところを見ずに、県民の期待を煽るだけ煽るというやり様は、政治家としていかがなものか。これではまるで「平成のおかげ参り」になってしまう。
この点は、茂木経済産業大臣のほうが冷静である。
「シェールガスも技術的に難しいと言われていたが、大規模に生産されるようになった。課題を乗りこえ、我が国周辺の資源を活用できる時代が早く来るといい」
三重県の研究会立ち上げ、陸揚げの想定、環境作り、産業振興策の検討、どれも数年活動して立ち消えてゆくだろう。時間と人件費の無駄なので、もう少し、事の成り行きを見守る方が県民のためになると思う。
急いては事をし損じる、ということなのですよ。鈴木知事。