序の舞

 昭和40年に発行された切手である。
http://www.yushu.co.jp/shop/g/g120425/
 ワシャは小学生の時代に切手収集をしていた。この切手を始めて手にした時、「きれいな絵だなぁ」と思ったものだ。
その頃は、この絵が上村松園の手になるものだとか、描かれた美女が能の「序の舞」を舞っているなんてことはなんにも知らない。その後、長じるにしたがい、この絵が昭和11年に描かれたことや、政府に買い上げされたことも知ることになる。
 美術史学者の辻惟雄は、松園の作品を「塵ひとつなく掃き清められた画面に登場する理想の女性は、気品があり過ぎていささか近寄りがたい」と評している。確かに辻さんの言うとおりだとは思う。が、ちりあくたにまみれた浮世にあって、たまには松園の絵のような清浄なものに触れるのも悪くはない。
 とくにワシャのように煩悩や欲望の塊のような輩には、この清浄なるものが時に必要となるのじゃ。