ワシャは日本画が好きである。上村松園がいいねぇ。たおやかな女性を描かせたら、この人の右に出る人はあるまい。いやいや、鏑木清方の女性たちにも気品が漂う。「築地明石町」の、見返る黒羽織の女の色っぽさはいかばかりであろうか。伊東深水もいいし、河合玉堂もよろしおまんなぁ。
いけない。話が逸れていくので元に戻すけど、上村松園の師匠が竹内栖鳳(たけうちせいほう)である。ざざっと4人ばかり、日本画壇の巨匠を挙げたが、この人たちと一線を画して上に立っているのが、竹内栖鳳だと思っている。この人の場合、動物を描かせたら凄まじいほどの生命力を放つ。例えば、重要文化財になっている「斑猫」など妖気すら感じさせる。おそらく「夏目友人帳」のニャンコ先生の本名が「斑」なのは、この絵から採用したのではあるまいか。
また、話が逸れてしまう。栖鳳のことである。この人の風景画も味わい深い。これを見ておくんなまし。上から7枚目。
これが「ベニスの月」という作品の下絵なんですけど、墨だけで、月光に浮かび上がる聖堂、シルエットになっている水面に浮かぶ船などが描き出されている。墨の濃淡だけで、建物の陰影、雲の流れ、水の揺らぎ、湿度の濃さまでもを描き切っている。凄い画力だ。