木柾と巨匠と憫笑

 昨日、午前中は親戚の法事があった。これが日蓮宗である。日蓮宗は木魚を叩かない。「ポクポクポクチーン」ではないのだ。木柾(もくしょう)という平たい円筒形の音響具を使う。これがまいった。木柾の打撃音というのが極めて高い。「キンキンキンキン」なのである。前回の法事の時、この金属音に近い高音に悩まされて、次からは対策をしていこうと決めていたのを、ついうっかり忘れてしまった。「キンキンキンキン」が容赦なくワシャの鼓膜から脳をを責めてくる。こりゃたまらない。最初の20分くらいは我慢していたのだが、ちっとも終わる気配がない。仕方がないので財布から1円玉を出して、耳にはめた。ダメだ。次にティッシュを出して、丸めて耳に突っ込む。これで多少緩和されたが、甲高い音はティッシュをも突き抜けて鼓膜を攻撃してくる。
 音の拷問が終わったのは46分後だった。日蓮宗の法事には、耳栓なしには二度と出るまい。
 法事のおひじに誘われたが、月曜日に大きな会議があってその準備もある。丁重に断って職場に顔を出す。日曜日というのに出勤している社員が多い。それでもワシャのフロアはワシャ一人……と思っていたら社長室に社長がいて驚いた。うちの社長、なかなか働き者だわい。
 仕事はサクサクと片づけ、午後からは友だちと名古屋に出る。夕方からポーランドのピアニスト、クリスチャン・ツィメルマンのリサイタルがあったのだ。芸文のコンサートホールでドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」などを堪能する。ああ、木柾に苛まれた鼓膜が気持ちよくほぐれていく。
「パゴダ」という曲がオープニングだった。初めて聞く曲である。しかしとても和のテイストにあふれている。そのことを友だちに言うと、「ドビュッシーはとても日本びいきだった」と解説してくれた。なるほど。また、「パゴダ」は仏塔のことらしく、そのあたりに和を感じたのかもしれない。ドビュッシー、なかなか良いですぞ。
 コンサートの後は、金山で軽く一杯。ウツボのから揚げがおいしかった。午前中をのぞき(笑)、とても癒された1日だった。

 話はガラリと変わる。
 今朝の朝日新聞である。このところの朝日新聞の論調は、親野田政権、反石原新党という色合いが濃い。天声人語でも橋下大阪市長がヘアスタイルを変えたことを俎上にのせて茶化す。へたなコラムの締めくくりは、人の言を借りて「何が目的か分からない年の差婚をした、したたかな女のよう」と石原さんと大同団結した橋下さんを嗤っている。
 このことから読み取れるのは、朝日新聞は「石原維新が嫌いだ」ということで、やっといなくなってくれた森喜朗と同様で、朝日新聞の言っていることの反対は正しいことが多い。国民が道を踏み外さないためのメルクマールとしては朝日新聞は極めて有効だと思う。だから家族の反対を押し切って朝日新聞をとっているのだ。

 もう一つおまけ。朝日新聞の4面が笑える。愚か者が4人揃い踏みである。一人は「トラスト・ミー」の鳩山由紀夫氏、もう一人はイタチの最後っ屁の森喜朗、官僚主導にしっかりもどした福田康夫元首相の記事が載っている。まぁ読むまでのことはない。
 そしてもう一人、「みどりの風」共同代表の谷岡郁子氏が「発言録」というコーナーで気炎を上げている。山崎誠、福田衣里子両前衆議院議員が「みどりの風」に入るんだとさ。その上、どこも引き受けてのない亀井静香さんまで面倒見るとは、こいつぁ凄いや。
 まぁ谷岡さん自身も「在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上を推進する議員連盟」に参加していたり、素っ頓狂な質問をしたりするヘンなオバサンなんでちょうどいいのかもしれないが……。
 それにしても愛知県というところは、政治家には恵まれないところだとつくづく思う今日この頃なのである。