整理整頓には注意をしなければ

 昨夜。
 少しでも日記を書かなくっちゃと思い、自宅にもどりとすぐに書斎へ籠る。気がつけば午後10時を回っていた。
「さて」と周囲を眺めれば、ずいぶん本が散らかっているではないか。このところ朝も早かったからなぁ。ちょいと整頓するか。そんな気を起こしたのがいけなかった。
 脚立や椅子を使って本をあるべき場所に戻す。一番高いところの棚が290cmである。ここはさすがに脚立でなければ届かない。低いところは脚立を移動するのがおっくうなので椅子のほうが楽だ。
 近代小説は書庫の東側に置いてある高さ190cmのごつい本棚の上のスペースをあてている。その高さなので椅子を使う。10月27日の日記を書くのに引っ張り出してきた『暗夜行路』などの文庫本を本棚の上に戻そうとした……その時のことである。
 リビング用の木製椅子にミニ座布団というかクッションが敷いてあるのだけれど、これに足を乗せたところ、座布団が滑ってバランスを崩したのだ。背中から床に落ちていく。咄嗟に「キャット空中3回転」をしようと思ったが、40cmの高さではできる道理がない。そのまま背中から床に落ちるしかないのか。とりあえずワシャの右にあるテーブルを右腕で叩くことで衝撃を緩和しよう。左手に持っていた文庫はすでに放り投げてフリーにした。左手で受け身を取るためである。床に鋭利なものは置いていないが、本やら雑貨やらが散乱している。なるべく何もない通路に落下するように体をひねった。それでも背面は確認のしようがない。顎を引いて歯を食いしばり、後頭部ではなく肩で衝撃を受けるように背をまるめた。あとは運を天に任せて落ちるだけである。
 バンバリバリッゴンドッシーンガッチャンガチャガチャカランコロンコロコロコロコロロロ……。
「バン」はテーブルを叩く音。
「バリバリッ」は受け身をとったときに割ってしまったプラスティックケース。
「ゴン」は右の脛がテーブルの足を蹴った音。
ドッシーン」は落ちた音ですわな。
「ガッチャンガチャガチャ」はテーブルを叩いた腕が、テーブル上の本やらペン立てやら懐中電灯やらを薙ぎ、それらが床に落ちる音。
「カランコロンコロコロコロコロロロ……」は懐中電灯のライト部分の丸いプラスティックが外れて床を転がり回転して止まるまでの音である。
 取りあえず後頭部は無事だった。なんと、『大日本帝国の興亡』(Gakken)が枕になってくれた。表紙には石原莞爾がついている。ありがとう石原莞爾
 前回、庭で転んだときは左足の腓骨を折った。そのことが頭を過ったので、起き上がる前に体の点検をする。右足の脛は思いきりテーブルの足を蹴ったので血がにじんでいる。ううむ、脛に傷をもつ男になってしまった。右手は力いっぱいテーブルを叩いたので赤くなっている。左手の小指は軽く突き指をしたようだ。臀部は全部痛い。どういった加減か右の鎖骨にも軽い痛みがある。あとはよさそうだ。もう一度、一番痛い右の脛を触り、骨折がないことを確認して起き上がった。全身が痛い。でも、腰に痛みはない。よかった。びっくりしたので整頓することはやめて、一杯飲んでさっさと寝ることにした。
 だから今朝もワシャのまわりは本が散乱している。ま、いいか。体のほうはというと節々が痛いのは変わっていない。だから、ワシャに会った時にはいたわってちょうだいね。