神経根造影およびブロック診療(続)

 処置室に入る。部屋の中央に胃の検査をするときに乗る大きな診療台が立っている。そこに裸足で立つように指示された。ワシャは腹を台につける格好で診療台に乗って台の周囲にあるバーをしっかりと握った。
「回転しますよ」
 と、看護婦さんが言う。立っていた台は徐々に横になっていく。床と並行になったところで停止した。
「パンツ下げますよ」
「どうぞ」
 と、まな板の鯉は答える。
 検査着がたくし上げられてパンツは下ろされ、ペロンとワシャのかわいいお尻が白日のもとに晒される。
MRIカメラセットして」
 これは先生の声だ。その後、背中の方で小さな機械音がする。
「消毒しますね」
 これも先生。その直後、腰の辺りに何かひんやりするものが塗りつけられる。
「それでは施術します。神経に針が接触すると痛みがあります。その時には『痛い』と言ってくださいね」
「ふわ〜い、わかりまいた」
 と、注射嫌いのワシャはビビって答える。
「いきますよ」
「ほえ〜」
 ピチ!(注射が背中に刺さる音)
「痛たたたたた!」
ワルシャワさん、まだ針を刺したばかりですよ」
「でも痛いんですから……」
「今からです」
 針が体内に入ってくるのが知覚でくる。
「ひえええええ!」
「どうですか、痛みはありますか?」
「あの、ずっと痛いんですが」
「本当に痛いんですか」
「針を刺されれば痛いでしょう」
 その時である。尋常ではない痛みが腰からつま先まで電気のように走った。ワシャの全身が硬直し、体全体が痙攣した。
「きてますきてますきてます!」
「きましたね」
 もう声がでない。からだ中から汗が吹き出す。
「いいですか、今から薬液を注入します。少しの間、激痛がはしりますが我慢してください」
「ううう……」
 もう声なんか出せまへん。この薬液の注入は痛かった。腰からつま先にかけての刺すような痛みに加えて、重い錘を足全体に載せられたような鈍痛がある。
「その内にすーっと痛みが抜けますからね、もう少し頑張ってください」
「ううう……」
 どのくらいの時間経過があったのかは分からないが、気が遠くなりかけた頃、先生の言うとおり、つま先からすーっと痛みが消えた。ワシャの全身から力が抜けた。助かった。
 先生の冷静な声が背中から聞こえる。
「もう1本行きましょう」
「ひえええ……」(続く)