久米仙人の話

 久米仙人の物語は、この日の日記の後段に書いた。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20120721/1342861758

 隔週刊の『男はつらいよ―寅さんDVDマガジン』も第45作目になった。残りは3作である。寅さんもずいぶん老けた。実年齢は63歳、それにしては若い。メイクアップのせいかもしれないが皺が目立たないのだ。
 45作のマドンナは、風吹ジュンで40歳である。まだまだ若くてきれいな風吹を相手に回して、寅さん、堂々と渡り合っている。
 今回のマドンナとの出会いは、宮崎県油津(あぶらつ)。小さな町の床屋の主人である蝶子が風吹ジュンの役どころである。そこに旅人の寅さんが現われる。運河に架かる石の橋で、通りかかった蝶子が「髪の毛が伸びているわよ」と散髪に誘う。

〇理容店・中
 髭をあたるのであお向けになってスチーミングをしている寅。
 蝶子は寅を背を向けてシェービングカップで石鹸を泡立てている。
 薄目を開けて蝶子を見る寅。
 蝶子のふくらはぎを見てハッとする。
 あわてて目を閉じる寅。

〇石の橋
 豪雨の中、嬉しそうな蝶子がビニール傘を差して駆けてくる。
 雨の跳ねがひどいのでスカートの裾をたくし上げている。
 蝶子のきれいな足が過ぎていく。

 この作品は、満男シリーズの4作目でもある。
 満男(吉岡秀隆)は相変わらず後輩のいずみ(後藤久美子)に恋心を抱いているが、なかなか行動に出せず焦っている。そんなある日、いずみを自宅の食事に誘い、両親とともに団欒のひと時を過ごす。夜が更けて、いずみが泊まっていくことになり、2階の部屋でかいがいしくいずみの布団を敷いている満男。そこにいずみが疲れた様子で現われる。

〇2階の部屋
 いずみ、足を投げ出してふくらはぎをさすっている。
いずみ「痛いの。一日中立ちっぱなしだから」
 満男、悲しげにいずみを見ている。
 その後、共通の友人の話になり、その女の子の結婚式に招待されていることを告げるいずみ。
満男「ぼくも行こうかな」
いずみ「だめよ。先輩が来たら困るわよ。あの子」
満男「どうして?」
いずみ「知らないの?しのぶ、先輩のこと好きだったんだよ」
満男「(動揺して)ウソだよ、なんかの間違いだよ、それ」
 あわててドアを閉める満男。
 階段を落ちる物音。

〇1階・階段下
 上から落ちてくる満男。

 このシーンでは、必ずしもいずみのふくらはぎが満男転落の主たる要因ではないが、「ふくらはぎ」→「転落」は明らかに久米仙人の物語を模している。
「男はみんな久米仙人なのじゃー!」
 と、力むほどのことでもないが、取りあえず言っておく。

 それにしても後藤久美子はいい。1989年の「男はつらいよ ぼくの伯父さん」で満男のガールフレンドとして登場し、その後、作品を重ねるたびに成長した姿を見せてくれる。15歳の少女は18歳になった。
 寅さんシリーズもあと3作を残すのみである。最終作の48作には成人したいずみが登場する。寅には、本命マドンナのリリー(浅丘ルリ子)が4回目の登板となる。はてさて満男と寅の「恋」はどうなりますことやら。