《航空機同士が適正な間隔を下回って異常接近し、空中衝突に至る危険があった状態。空中衝突を避けるための航空機の急激な回避運動のために乗客が死傷する場合もある。日本では明確な基準は定められていないが、アメリカ連邦航空局(FAA)では、半径150m、高度差60m以内の接近と定義している。》
千歳空港から乗った飛行機はボーイング737だった。近距離の輸送にはこの機が使いやすく飛行場でもよく見かけるタイプである。全長39.5m、座席数184席とコンパクトな仕様だ。747、777と比べると、半分くらいの寸法となっている。
新書の余白に書かれたメモに依れば、13:58に千歳空港を離陸した。
「14:04、上昇終わる」
とあるから、6分の上昇後、水平飛行に移行したようだ。
「14:06、気流みだれる」
「ご安心くださいと言われても、安心できんわい」
気流の乱れにより機体が揺れ、キャビンアテンダントのアナウンスが入ったときのメモである。
以降、ずっと雲の中の飛行が続く。地表が見えないどころか、空も見えない。
「14:51、雲が切れた」
この時、眼下の雲がうろこ状となっているのに気がついた。そのうろこの隙間から樹木に覆われた山々が見える。
「14:53、川が蛇行している」
とある。
「14:55、また雲の中に」
その次のメモである。
「14:57、左上空10時の方向に機」
とある。ワシャの乗っている737の上空を、やはり737だと思われる機影がかすめるように交差して飛び去った。737であれば、全長39.5mである。そこから推し測ると、どうだろう、交差した両機は150mも離れていただろうか。
まさか、飛行機嫌いのワシャが見た白昼夢ではないと思うが。
「15:05、ダム見える」
ロックフィルダムだ。高度を下げ始めるこの時期に見えるとすれば、岐阜県の岩屋ダムか。
「15:10、ジャンクション タンク」
名神高速小牧ジャンクションである。その南側には、特徴的なベージュのガスタンクが見える。
その後、ナゴヤドーム、名古屋城を回り込んで、名駅、名古屋競馬場、金城ふ頭、知多半島の海岸線をなめるようにしてセントレアに着陸したのである。めでたしめでたし。