北の国から(その2)

 1日目は、旭川市の西に隣接する深川市で宿泊をした。東川町の用務先からタクシーで旭川駅まで行く。そこから各駅停車に乗って4駅30分ほどの行程である。もちろん道央の中心都市である旭川のほうが、ホテルにしても飲みに行くにしても便はいい。しかし、翌日の朝の仕事のことを考えると、深川まで行って宿泊したほうが時間のロスが少ないのである。
 だから、道央の小さな駅に降り立った。

 深川市である。石狩平野の北端に位置する人口2万3000ばかりの小さな町である。財政力も極めて悪く、人口減少に歯止めがかからない。でも、いいところである。駅は南に降りる。そこが駅前広場なのだが、なにしろ空が広い。三階建て以上の建物は商工会議所があるだけだ。その他は見当たらない。
 そして北海道全般にいえることなのだが道路が広く、そして碁盤目になっている。東西に何本も大通りがはしっているのだが、車はときおり思い出したように通過するくらいで、大通りのセンターラインでランチが食べられそうだ。2車線道路が交差するところでも、信号がない。せせこましい路地にさえ信号機がついている愛知県とは、ずいぶん印象が違うなぁ。
 条里制だから縦横がはっきりしていて迷うということがない。早朝に1時間ほど街を歩いたが、ある意味単調だった。でもね、交差点の中央に立って眺めると、極端に言えば、地平線までまっすぐに道路が続いている、そんな感じなんですよ。
 散歩には半袖シャツで出た。もちろんその下にはアンダーウエアを着ている。しかし寒い。歩き始めのころは、鳥肌が立った。これが北海道か……。でも、10分ほど歩いていると体が温まってきて丁度いいコンディションになる。コンビニのオニーチャンに話しかけると、
「今が一番暑い時期です。これからだんだん寒くなりますよ」
 と言う。ホントかいな。

 コンビニで買ったトマトジュースで水分補給をしてさらに歩いていると、鉄橋にでた。石狩川に掛かる深川橋である。橋を中ほどまで歩いてみた。川面ははるか下にある。アイヌ語ではこの辺りを「オオ・ホ・ナイ」 (深い川)と呼んでいた。深川という地名はそこからとったそうだ。たしかに堤外地の高さから比べると石狩川の水面は低い、つまり深い。アイヌ語で川には二通りの言い方がある。「ナイ」と「ペッ」である。「ナイ」は飲むことのできる川、「ベッ」は飲むことができない川と言われている。「オオ・ホ・ナイ」と呼ばれていたとするなら、このあたりの石狩川は澄んだ清流だったのだろう。(つづく)