さらに天声人語

 昨日の続き。
 5月8日付けの「天声人語」が、中身のないスカスカなコラムだということは昨日の日記で書いた。
 昨日、配信された勝谷誠彦さんのメルマガでも、天候の不安定なことを取り上げている。やっぱり、やっつけ仕事の「天声人語」とは違う。キラリと光るネタが仕込まれている。
 例えば、避難場所についてだが、「高架や鉄橋の下が竜巻や突風に限って言えば危険だ」ということに触れている。これには、「ほう!」と思われる方も多いのではないか。少なくともワシャは「ほう!」となった。こういったトリビアの披瀝もコラムの重要な役割だ。残念ながら問題の「天声人語」には、こんなトリビアもなかった。

 そして今日の「天声人語」である。まずはお読みください。

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 ベトナム戦争の取材体験に基づく開高健の小説「輝ける闇」は、表題から意表を突く。ドイツの哲学者、ハイデガーの評言を引いたそうだが、読まずして鮮烈な緊張感に包まれる。常識の裏をかいた「逆さまの形容」は、多用は禁物ながら便利な修辞である▼〈マイナス100度の太陽みたいに/身体(からだ)を湿らす恋をして……〉。桑田佳祐さんの佳曲「真夏の果実」の詞が胸に残るのも、灼熱(しゃくねつ)カラリであるべき日輪を、しっぽり冷涼に描いた技の冴(さ)えだろう▼「太陽まもなく冬眠?」の本紙記事に、ひんやりと不安を覚えた。国立天文台によると、太陽の活動に異変が生じ、地球が「低温期」に入るかもしれない。万物のエネルギー源だけに気がかりだ▼太陽には南北に磁場の極があり、ほぼ11年の周期で正負が同時に入れ替わる。ところが、北極の反転が1年ほど先行し、活動低下の兆しがあるそうだ。磁場に連動する黒点の現れ方も、17世紀後半に始まった低温期に似ているらしい▼往時の異変を、各国の古文書がとどめている。ロンドンのテムズ川が凍り、京都では桜の開花が遅れた。凶作や飢饉(ききん)の多発は、政治や経済を揺るがした。低温期は約70年続いたという▼過日の小欄で触れた氷河期に比べ、太陽活動の盛衰はずっと短い周期で繰り返す。前者を潮の満ち干とすれば、寄せては返す波だろうか。温暖化のさなか、「冷たい太陽」は「良い衰弱」かもしれない。だからといって、省エネの手を緩める「悪い安心」には浸れない。
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 要旨は、「太陽活動に異変が生じている。地球が低温期に入るかも。でも温暖化につながるCO2削減のための省エネは続けようね」というもの。全6段606字からなるコラムである。
 1段目、2段目は、最後の6段目につなげるためだけの仕込み、前振りと考えていい。1段目は、開高健の小説の題名を示し「逆さまの形容」というのがあるよと書く。2段目で、その例として桑田佳祐の歌詞を引用し「マイナス100度の太陽……」を見せる。これを3段目につないでいく手法は手練れといえば手練れなのだが、この前振り2段で206字を要している。短いコラムにも関わらず3分の1が、筆者の言いたいこととは関係がない仕込みの文で埋められている。無駄と言えば無駄な文章だ。
 3段目から5段目までは、昨日の朝日新聞「ニュースがわからん!」欄に書いてあることをそのまま写しただけ。
《「太陽まもなく冬眠?」の本紙記事に、ひんやりと不安を覚えた。》
 アリバイ的に上記の文を冒頭にもってきているが、まるっきり同じだから言い訳にもならない。
 そして「結」の6段目、1段目の仕込みの《常識の裏をかいた「逆さまの形容」》を使って「冷たい太陽」「良い衰弱」「悪い安心」と並べて、地球が冷たくなっても温暖化の原因のCO2削減はしようね、と暗に言っている。自身で「多用は禁物」と言った「逆さまの形容」を最後に連打してくる。ギャグなら面白いけどね。

 二酸化炭素悪玉説は、原子力発電利権に連なるアル・ゴアや、電気事業者どもの策謀だったことが明白になっている。2000年以降、地球の気温は下がっているのだ。それはもちろん太陽活動の影響による。それ以前の温度上昇も太陽活動による。
 今頃、森羅万象に通じる(笑)天声人語氏が「地球温暖化」でもあるまい。コラムニストとしての矜持があるなら、他のメディアが触れない本質的な部分を抉り取ってコラムにしろよ。