またまた劣天声人語

 朝日新聞の「天声人語」をバックナンバー(といっても昨日の分なんですよ)にアクセスしようとすると、無料とはいえ登録をしないとWeb上では読めない。
http://www.asahi.com/articles/DA3S10960753.html?ref=tenseijingo_backnumber
 だから、当日の「天声人語」なら文を提示して批評も出来るのだが、たった1日でそれがままならなくなる。読者も1日経過すると「天声人語」をきっちりと読むと、内容の薄さに気づいてしまう。そうするといろいろ言いたくもなる人も出てこよう。駄文をいつまでも晒しておくと、突っ込まれる危険性も高くなるので、前日分はさっさと隠してしまうのか。下手な文をわざわざ登録までして読むほどのことはないものね(笑)。
 ま、いいや写せるところだけ写しながら解説をしよう。昨日の書き出しはこうだ。
《「雑」という字には不思議な味わいがある。とりちらかって二束三文、なにかと低く見られがちだが、雑貨、雑炊(ぞうすい)、身辺雑記、あれやこれや、身の丈の親しみを醸(かも)しだす。》
 この後に「雑節」なる言葉を導き出すための前置きである。ここまでは辞書をまるっと写しただけのもの。続いて
《きのうの節分は 「雑節(ざっせつ)」と呼ばれる。季節の目安になる二十四節気以外の日を、そう称するそうだ》
この文の後ろに「土用、彼岸、八十八夜」などを並べる。これもウィキペディアで調べればずらずらと出てくる安易な情報ですな。
 天声人語氏の地の文が出てくるのは180文字を過ぎてからである。
《すまし顔の二十四節気にくらべて、おもちゃ箱を開けた感じがある。》
そんな感じですかねぇ。その後、ワシャの嫌いな「恵方巻き」の話をはさんで、こう展開する。
《そんなきのう、「雑」つながりでもないけれど、東京の西郊外、武蔵野の雑木林を歩いてみた》
 と、きたものである。完全に「雑」でつなげるための前ふりじゃないの。「つながりでもないけれど」で無理やりつなげてるじゃん。これはコラムニストとしては「ど下手」でしょう。
 ここから「徒然草」を引きながら、雑木林の話に入っていく。それもおそらくここしかないだろうという155段である。
《木々が秋に葉を落とす営みを、「徒然草」の兼好法師はこう観察した。葉が落ちてから新しい葉が芽ぐむのではない。新たに兆してくる生命力によって秋の葉は落ちるのだ、と。》
 155段の解説を丸写ししただけやね。
《遠い春を内に抱いて歳を超えた雑木たちである。》
 を接着剤にして、強引に次の文につなぐ。
《そしてきょうは立春。》
 この後ろに「立春だけど冷え込んでくる。とりわけ北国の人は雪に注意してほしい」と誰でも書きそうなことを並べ立てる。そして締めの文がこれだ。
《寒波襲来で天気予報には雪マークが続く。冬将軍に鬼の面をかぶらせたかった。》
なんのこっちゃ。冬将軍に鬼の面をかぶらせてどうしたいの?これがオチだとするならば、落語でいえば前座の前戯だね。全体の構成もバラバラで雑な文章だ。内容もない。それに「雑」始めたなら最後のところに「雑」を入れ込みたい。
 全体を書きなおしたいところだが、天声人語氏に敬意を表して、ラストの文だけ手を入れさせてもらいたい。
「寒波襲来をつげる天気予想図には、乱雑に雪マークが並ぶ。居座る冬将軍にも豆をくらわせ列島から追い出したいものだ。」
 
 天野祐吉さんがお亡くなりになられて、鑑賞にたえられるコラムが朝日新聞から消えた。天声人語を書く優秀なるコラム担当者の皆さん、一所懸命に精進して、天野さんのコラムを書き写して、読者をうならせるような文章を読ませてくださいよ。