地方の底力

 岐阜県の多治見市長がおもしろい発言をしている。
 東北地方太平洋沖地震発生直後に、多治見市では被災地支援のための物資を集め、支援の準備を始めていた。これは多治見市長のフットワークのよさということもあるのだが、意識の高い自治体では、どこも同様の動きをしたに違いない。
 もし、あなたの自治体が、この時期に手をこまねいて、なんの動きも見せていなかったとしたら、間違いなく組織が腐っている。トップを替えたほうがいいだろう。
 さて、多治見市である。支援準備を進めていたところ、岐阜県庁から「勝手に動くな。県の指示を待て」という連絡が入った。「県が音頭をとるのか……」と市長は、当然のことながら、そう考える。
 しかし、1週間経っても、県からの指示はなかった。「これはまずい」と考えた多治見市長はすぐに動いた。以前から懇意にしていた福島県二本松市の市長に電話連絡する。そうしたところ「すぐにでも水、食料、毛布が欲しい」と、悲鳴に近い返事があったという。多治見市長は、周辺の3市に声をかけ、必要物資をまとめる。そして、4市の防災職員とともに、二本松市に送り込んだのである。
 多治見市長は言う。
「国、県の指示を待っていても前に進まないということを学習した」
 これが支援を検討していた大方の市町村の実感だと思う。

 岐阜県の動きは悪かった。国の対応も周知のとおりだ。そろそろ、大き過ぎる行政体は、その役目を終えたのではないかと思う。
 上記の、多治見市を中心とした4市の人口の合計は28万人ほどである。このくらいの規模が適当だと思う。首長は職員を把握しやすく、住民からトップの顔も見える。行政の効率もいい。基礎自治体を30万人程度で再編できれば、地方の時代が必ず到来する。そう確信している。