蕎麦と熱燗

 昨日、御園座に行った。
 昼の部「義経千本桜」から「渡海屋の場」と「大物の浦の場」。主人公の平知盛松緑が演じる。「女伊達」は時蔵。華やかな踊りが時間を忘れさせてくれる。
 昼の最後は、「直侍」だった。片岡直次郎を菊之助が演じる。以前、この狂言團十郎で観ているが、蕎麦の食い方は團十郎の方が巧い。菊之助、少し蕎麦のつまみ方が多すぎる。あれでは粋に見えない。せいぜい2〜3本を箸でつまんで、ツルルッといかなきゃいけねえよ。一度、失敗をしてもう一度持ち上げたときに十数本もつまんでしまった。それをズルッといったのはいいが、さすがにそれだけを一気に喉には流しこめねぇ。だから、ついつい咀嚼してしまった。
 直次郎と対称をつくるために、冒頭に岡っ引きの手下が2人出てくる。その2人がボソボソと蕎麦を食う。田舎者の食い方を見せるわけだ。ところが、この2人のほうが、蕎麦の食い方が決まっている。日ごろから蕎麦を食いなれているから、2〜3本を箸でつまんでツルルッと飲みこむ。手下のほうが粋な喰い方になってしまった。菊之助ちゃん、もう少し蕎麦を食い慣れたほうがいい。
 しかし、熱燗を独り飲むところは、うまそうに見えた。こちらは合格。お酒はどうやらお好きなようでゲス。
 菊之助の舞台は度々観ているが、演技のほうは、ずいぶんこなれてきた。声もいい。なんとなくだが、海老蔵の声に似ている。姿もいい。菊之助が直次郎をやると本当に色男だから悔しいわい。
 歌舞伎鑑賞の後、歌舞伎仲間と金山へ出て熱燗をいただきました。う〜ん、「入谷蕎麦屋の場」からずっと飲みたかったので、これは美味かった。また、素敵な女性にお酌をしていただいたので、味も格別でしたぞ。ここだけは、独り酒の直次郎に勝ったようだ(喜)。