佐高信というある意味で凄い人

 昨日、仕事の帰りに書店に寄った。新刊書のコーナーを物色していると、目に引っ掛かった本がある。佐高信『タレント文化人200人斬り』(毎日新聞社)だった。
 佐高氏は、1998年に『タレント文化人100人斬り』、2002年に『タレント文化人150人斬り』を出している。その延長上の本だということは、アホでもわかる。

「まさかそんなことはないよな」

 ふっとある種の予感が脳裏をかすめた。急ぎ本を手にする。パラパラッと繰ってみれば、ワシャの「まさか」が的中した。
 例えば、佐高氏が忌み嫌う評論家の呉智英さんのことをこき下ろした文章が載っている。
《また一匹、季節はずれのハエがまとわりついてきた。》で始まるあまり上品とはいえない悪口コラムである。
 実は、この文章(他の文章もなのだが)が掲載されている本は何冊も出ている。1994年に刊行された『佐高信の筆刀直評94』(毎日新聞社)の93ページに《また一匹、季節はずれのハエが……》と出ている。そして、これが初出ではなく、この文章は、雑誌「噂の真相」の1994年3月号の書いたものを、こちらに載せたものである。雑誌の連載を単行本にすることはもちろんよくある話だ。まぁ、同じ文章を3回も使いまわして楽な文筆稼業だなぁとは思う。

 ところが我らが佐高ちゃんは、そんな甘いものではない。前述の『100人斬り』『150人斬り』でもちゃっかりと載せている、というか、呉智英さんの項を含めて、少しの追加分以外はみな同じ文章と言っていい。一粒で五倍も美味しいのだから、止められませんね。
 内容が軽いのと、すでに読んだ文章が多いので、10分程立ち読みをすれば読めてしまう。大笑いをさせてもらって、ぜったい買わない本なので、そっと書棚に戻したのだった。