隠密が将軍を目覚めさせた

 いつもの本屋から、「e−honから本が届きましたよ」と連絡が入ったので、仕事帰りに立ち寄った。注文した本の中に、佐藤優『野蛮人の図書室』(講談社)がある。ワシャはブックガイド系の本が好きなので、見つければ買っておく。今回も、ヘビーな読書家であり書き手でもある佐藤さんのブックガイドなので楽しみにしていた。

 まず、まえがきの題が「ようこそ、ラズベーチク・ライブラリーへ」となっている。ちなみに「ラズベーチク」というのはロシア語で「諜報機関員」のことを言う。書き出しが佐藤さんらしいや。
 その中にいいことが書いている。
《1人の人間の能力や経験には限界がある。この限界を突破するためには、他人の知識や経験から学ぶことが重要である。そのためにもっとも効果的な方法が読書だ。読書によって代理経験を積むのだ。》
 確かに言われるとおりだと思う。ワシャは戦国時代など知らないけれど、『信長公記』、『甲陽軍鑑』、『三河物語』などを読むことで戦国時代のことを見てきたように知っている。当時の人の文章を読むことで代理経験しているわけだ。
 こんなフレーズもあった。
《読書をする人は、しない人と比べて人生が4〜5倍豊かになると評者は信じている。》
 これも、そのとおりだと思う。読書をしなければ、新たな世界を垣間見ることはできない。「本を1冊も読まない」と豪語する人は幸せである。なにも知ることもなしに、この世を去って逝けるのだから。そんな人生は存在しなかったのにも等しいのではないか。ご苦労様と申し上げたい。

 さて、佐藤さんの進める本たちである。総数で120冊程度が紹介されている。ワシャの書庫にある本もある。ない本もある。ない本は、また、買っちまうんだろうなぁ。
『野蛮人の図書室』p144に「リーダーシップの要諦」という項がある。そこでは、『統帥綱領』(建帛社)という本が紹介されていた。
 むふふ、これはありましたぞ。そうそう、以前に古本屋めぐりをしていたときに、半値の3000円で出ていたので、買っていたものである。この本について、佐藤さんはこう解説する。
《旧日本軍の軍事機密で、将官および参謀のために国軍統帥の大綱を説いた、戦術、戦略の基本書。単なる兵書でなく、経営や人生にまつわる教訓が数多く見られるため、現代人にとってビジネス本として読むこともできる。》
 佐藤さんの本が、別の本を書庫の奥から呼び出した格好になった。久しぶりに『統帥綱領』を読みなおしてみるか。豊かな人生をおくるために。

 そうそう、本日12月8日は日米開戦の日、真珠湾攻撃の日である。インテリジェンスの高い人は、真珠湾攻撃以前から、アメリカが日本に対して攻撃を行っていたことは周知の事実だし、真珠湾そのものが日本に仕掛けられた巨大な虎ばさみであることも知られている。そんなことも本を読まないと見えてこない。