平成24年春の褒章受章者が発表された。
http://1topi.jp/1/r.sm3.jp/4lNS
俳優の役所広司さんや漫画家の萩尾望都さんら674人と20の団体が受章する。役所さんには「パコと魔法の絵本」で大笑いさせてもらったし、萩尾さんには「百億の昼と千億の夜」(原作:光瀬龍)でプラトンや阿修羅と出会わせてもらった。
萩尾さんを漫画家への道へいざなったのが竹宮惠子さんであることはつとに有名である。たまたま、呉智英さんの書評を読んでいて、竹宮さんの著作『マンガの脚本概論』(角川学芸出版)を推薦されていたので、注文していて、それが今日届くことになっている。なんの脈絡もないが、そんな偶然がうれしい。
余談はさておき、映画やマンガでお世話になったご両所には心より祝意を表したい。
それはそれとして、受章者が多過ぎないか。春・秋あわせて1000人を超す。もちろんそれぞれ立派な業績を打ち立ててきた方ばかりだと思うが、もう少し厳選してもいい。やや粗製乱造に過ぎる。
確かに褒章にはそれほど金がかからない。乱発しても貰った人は有り難がってくれるし、その人の所属するコミュニティもしばし盛り上がる。景気の悪いご時世だからそれはそれでいいのかもしれない。
この国家による文化奨励策が口火を切ったのは、今からさかのぼること75年前のことになる。昭和12年4月28日午前11時、内閣賞勲局総裁室において、日本初の文化勲章の授与式が執り行われた。
この時の受賞者は、物理学者の長岡半太郎、本多光太郎、天文学者の木村栄、国文学者の佐佐木信綱、作家の幸田露伴、洋画家の岡田三郎助、藤島武二、日本画家から竹内栖鳳、横山大観の9人である。
ワシャがこのフレーズを使うのは恥ずかしいが、「軍靴の音が高まりだした」この時期に、従来は軍事、国務に限られていた勲章・褒章を文化方面にも拡大し、軍事最優先の国体の雰囲気を、少しでも和らげようという苦肉の策だったと思う。
そうそう、岡田三郎助、藤島武二と言えば、去年の10月に「JAPANESE BEAUTY」という展示会があったことを思い出した。三重県立美術館で、この二人の作品がずらりと並んだ。見ごたえがあった。「あやめの女」は匂い立つような作品だった。藤島武二は「婦人と朝顔」であろう。満開の朝顔を背景に、朝日を浴びている美しき女性、少し物憂げな表情は、朝と朝につながる未明の彼女をも連想させる。深い作品である。
なお、藤島武二は、授与式に出席していない。満洲にスケッチ旅行に出掛けていたのだ。作品そのままの大らかな人物だったようだ。
そうそう、今日、ワシャの町で新しい喫茶店がオープンする。名前を「南吉館」という。お察しのとおり、あの童話作家新美南吉に因んだ店舗である。
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20120427/CK2012042702000030.html
竹宮惠子さんの本など6冊がいつもの書店に届いているというメールがあった。それを取りにいくついでに、近所の「南吉館」にも行ってみることにする。