街歩き

 人間ドックの結果、血圧が少し高いことが判明した。だから努めて歩くよう心がけることにする。
 そんなこともあって、今日は街歩きに出掛けていた。行く先は、三重県菰野町。知らない人は知らないが、いいところなんですよ。鈴鹿山脈の東の裾野にある閑静な町で、名古屋から行くと、近鉄四日市で乗り換えて、「湯の山線」で20分少々である。この鉄路はその名のとおり、御在所山麓ににある湯の山温泉に向かっている。だから、電車の運転席越しに鈴鹿の主峰の御在所岳が常に見えていた。

 友だちと降り立ったのは、大羽根園駅、ひなびた無人の駅は、風にゆれるススキとともに旅愁をさそう。名古屋近郊ということをしばし忘れさせてくれる。
 フーテンの寅さんが、ひょいと駅頭に現れて「いよっ青年、恋をしているか」と声を掛けてきそうな、そんなたたずまいがある。事実、「男はつらいよ」シリーズの第3作では、寅次郎、湯の山に現れている。そこで、美人女将に恋をして騒動を巻き起こす。そうか、寅さんもこの田舎の風景を見ているんだなぁ。

 さて、街歩きである。昼時になったので、食事処を探す。確か、駅の北方向に蕎麦屋があったはずなのだが……。住宅地を回ってみるが、それらしき店はない。仕方がないので、電話してみると、一駅違っていた。歩いて行くには少々遠いので断念し、大羽根園駅の西にある自然薯の店「茶茶」に入る。ここでワシャはとろろ雑炊をいただく。二日酔いだったので、これが滅法うまかった。蕎麦風味の雑炊に、自然薯のすったのを入れて、仲居さんがかき混ぜるかき混ぜる。どろんとした舌触りがとても心地いい。友だちの食べていた自然薯そばも美味しそうだった。
 蕎麦屋を見つけられず大正解だったわい。

 食事の後、そこから目と鼻の先の「パラミタミュージアム」に行く。ここが端からの目的だった。ここで開催中の「北大路魯山人展」、常設展の「池田満寿夫般若心経の世界展」の鑑賞する。これがどちらも凄まじい。天才とは斯くありなんというとんでもない展示である。実は、この展示に少々中ってしまった。酔っていると言ってもいい。
 展示の内容については酔いが醒めてからゆっくりと話したい。