読書について

 昨日は歌舞伎仲間の勉強会だった。
 10月に名古屋御園座で吉例顔見世がある。演目は、「南総里見八犬伝」、「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」、「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」、「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」、「棒しばり」、「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」となっている。
 勉強会は、ワシャが皆さんに、歌舞伎の背景、筋、見どころなどをパワーポイントで映しながら解説するというものである。だから、一通り、筋書とか、過去のパンフレット、文献などを当たっておかないと話ができない。
 例えば、「南総里見八犬伝」では、『南総里見八犬伝』(岩波文庫)、「一條大蔵譚」では『平家物語』(講談社学術文庫)、『吾妻鑑』(岩波文庫)、『NHK大河ドラマストーリー 義経』(NHK出版)といったラインナップに目を通しておく。もちろん、手持ちの歌舞伎座御園座の筋書や、月刊誌の『演劇界』は一応全部手に取って確認する。
 これが自分にとってのいい勉強になるんですね。ジャーナリストの日垣隆さんが言われる「観客効果と締切効果」というものでしょうか。勉強会までの時間の使い方とか本の読み方がとても効率的になるのだ。
 また、先日、三河で開催した読書会や、月一で行っている地元の読書会、日垣さんがネット上で開いている古典読書会なども、いい「観客効果と締切効果」となってワシャの読書に貢献してくれている。
 先週末のセミナーで、日垣さんは言った。
「月に4冊の本を読む人は日本人の0.5%だ」
 確かに本の売れ行きをみていると、50〜60万人がコンスタントに本を読む人なのだろう。
 たまたま勉強会のメンバーに「月にどのくらい読むの?」と尋ねると、ちょうど「4冊」という答えだった。「ということは、あなたは0.5%に入る読書家ですぞ」と言うと、驚いておられた。
 カナダの実業家であるキングスレイ・ウォードは読書の効能についてこんなことを言っている。
「私は人生のこの段階で、ただ読書のおかげで、一生を十回も経験したような気がする。それで優越感を感じるというのではない。そういうことではなく、地上で与えられた時間を有効に使っているという気がするのである。そして、あらゆる意味で、小さな閉鎖的な社会に生まれて、自ら望んだにせよ、望まないにせよ、その外の世界を実際に、あるいは書物を通じて知的に、見る機会のない人たちを気の毒に思う」
 ここまで大げさには考えないが、歌舞伎という芸能一つとっても、ちょっと演目の内容に目を通していくだけで面白さが随分と違ってくる。一生を十回とはいわないが、人の倍くらいの濃さで生きたいと思っているので、今日もせっせと読書に励むのだった。