ワシャは元気なのか?(10日目)

 腰の調子は相変わらず。
 手の怪我は治りつつある。
 研修は朝からぶっ通し、一息つく暇もない。
 講師はへたくそばかりで、あれならワシャがやったほうがどれだけ面白いことか。
 昨日の最後は某省の現役官僚(もちろん東大卒)の講話だったが、上から目線で聞けたものではない。こんな詰まらない話しかできない人物が、将来、官僚として登りつめてこの国の転轍機を握るのかと思うと情けない。
 どの時代でもどの国でも、時代を動かしてきた男たちは実に魅力的だった。ワシャは、坂本龍馬とどこかの居酒屋で一杯やりたいし、大久保利通と口角泡を飛ばして議論をしたいものだ。
 現在の霞ヶ関で偉くなっていく官僚はおおむね保身がうまく世渡り上手と言っていい。魅力のある官僚は、早い段階で霞ヶ関村に見切りをつけて転身を図っている。ワシャと仲のいい官僚も、すでに十数年、霞ヶ関村に戻っていない。というか本人も「もう戻るつもりもないし、戻れない」と言っている。彼はとても魅力的な男なんですよ。それから、官僚制度に異を唱えた経済産業省の古賀茂明さんも魅力的な人だ。古賀さんに「もう君は救えない。天下ってくれ」と言った、保身丸出しの上司の事務次官とは対称的である。
 偉くなっていく官僚は、市町村職員よりよっぽど役人で、これでは面白い政策など夢のまた夢。『失敗の本質』(中公文庫)に登場する軍エリートたちの末裔と言っても過言ではあるまい。

 全5コマの研修を終えて、講師より先に教室を出る。待たせておいたタクシーに飛び乗って急ぎ立川駅へ。昨夜は、ジャーナリストの日垣隆さんが主催する「日垣塾」が新宿で開催された。それに参加するために急いでいる。塾のテーマは「放射能汚染の正しい怖がり方--広島・長崎・ビキニからフクシマまで--徹底取材の全成果」である。
 ゲストは毎日新聞社の斗ヶ沢秀俊(とがさわ・ひでとし)さん。また、リスク管理の世界的権威もご登場され、濃厚な2時間半の講義となった。

 雲泥の差というのはこういうことを言うのだろう。

[メモ]
 中央線立川駅で快速に飛び乗った。優先席が空いていたので座る。座ってすぐに異臭が漂っているのに気がついた。ワシャは鼻がきく。
 前の席を見ると、でっぷりとただれたように太った浮浪者が座っていた。あご髭はヤギのように長くだらしない。
 ううう、あまりの臭さに鼻が曲がりそうだ。車内には立っている乗客もいるのだが、その男を中心にして5m半径で席は空いている。そこにワシャが座ってしまった。
 社会というものは、お互いに少しずつ忍従をしながら成立するものだと思っている。しかし、10人が10人とも不快になる臭気を放つ人間をそれでも許容しなければならないのだろうか。