東京都立川市

 ひょんな縁から、立川市のことを調べている。人口178,000人、面積24.38平方キロ、豊明市よりも少し大きいくらいか。

 万葉集にこんな歌がある。
「赤駒を山野に放し捕りかにて多摩の横山かしゆかやらむ」
『新訓万葉集』(岩波文庫)によれば、この歌は武蔵国豊島郡に住む宇遅部黒女(うじべのくろめ)が、防人として西に旅立つ椋椅部荒虫(くらはしべのあらむし)のことを想って詠んだ歌とされている。
 歌意は、「恋人に乗って行ってもらおうと思っていた赤馬がどこかに放逐してしまった。荒虫は、『よいよい、最初から歩いていくつもりだったから』と言いながら、日のあるうちに多摩の横山を越えるべく西に向かうのだった」
 そんな感じだろうか。「かしゆか遣らむ」とは、「歩いて行かせねばならないのか」というようなニュアンスだろう。

 そんなことはどうでもいい。問題は「多摩の横山」である。古代律令制の時代、武蔵国国府府中市あたりにあった。そこから南を望めば多摩丘陵が横たわっている。これを「多摩の緯山(よこやま)」と呼んだ。
 そして、その横山の前を流れる川を「経川(たてかわ)」と呼称する。これが「立川」の由来らしい。
 立川駅の北の繁華なエリアが「曙町」である。この町名は、昭和17年に成立した町名で、当初は飛行場が近くにあったために「羽衣町」にする予定だった。ところが軍部から「羽衣では軟弱でダメ」と言われ、「羽衣町」の東の地区につけようと思っていた「曙町」と入れ替えたという。

 歌つながりで、駅ビルの前に若山牧水の歌碑がある。
「立川の 駅の古茶屋 さくら樹の もみじのかげに見送りし子よ」
 立川に行ったら、それも確認してこうっと。