誇り高き父祖、恥知らずの後裔

 106年前の今日、日本海を航行するロシア戦艦「ニコライ一世」のヤードに「S・J・D」(われ降伏す)の万国信号旗が揚がった。

 極東の小さな島国が、世界の列強の一角であるロシア帝国とがっぷり四つに組んで戦争を始めていた。開戦からすでに1年3か月が過ぎており、このまま長引けば資源のない日本の敗戦は決定的となる。そんな時期に、ロシアは極東艦隊の支援部隊として遠く大西洋からバルチック艦隊を呼び寄せた。
 そのバルチック艦隊と日本連合艦隊が昨日、対馬沖で激突した。ロシアは艦隊を3セット持っている。残念ながら貧しい日本国には連合艦隊を一つ整えるのが精一杯で、ここでその虎の子の1セットを失えば日本の制海権はなくなってしまう。海上補給路が途絶えれば、大陸に展開する日本軍は立ち枯れ、日露戦争は日本の敗北になる。
 だから、東郷平八郎以下連合艦隊将兵たちは必死だった。秋山真之の編み出した「T字戦法」に望みを託し、決死の覚悟でバルチック艦隊の進行方向に横っ腹をさらして立ちはだかった。
 海戦の結果、ロシア軍の被害は37隻中20隻が撃沈、5隻が捕獲、残りも武装解除を余儀なくされている。片や日本連合艦隊の損失は水雷艇3隻を失っただけで虎の子の1セットはほぼ温存することができた。これは当時の海上戦においては奇跡と言っていい。
 この事実を突き付けられたロシアのロジェストヴェンスキー司令長官は「想定外だ!」と言ったとか言わなかったとか……。
 
 私たちの父祖たちは、日本の国益を国柄を国土を国民を守るために命がけで戦ってきた。それがどうだ。今朝の朝日新聞3面に、満面の笑みでロシアのメドベージェフ大統領と固い握手をするすっから菅首相である。ロシアは、北方領土を自国化する姿勢に揺るぎはない。もう全世界に「歯舞、色丹、国後、択捉はロシアの領土」と言ってはばからない。そんな国の元首と、破顔して写真に写るなよ。

 日露戦争はどうどうたる国家と国家の戦争だった。その結果として領土をとったりとられたりということがあってもそれはルールに則った上でのことである。しかし、どうだ。スターリンの国が北方領土を得たのは、いやいやそれだけではない千島列島をも含めて掠め取っていったのは、国際ルールを無視した強盗行為ではなかったのか。
 他国を敗戦のどさくさに紛れて、軍を進駐して無抵抗の婦女子を殺害し、占領するなどという行為が許されるものなのか。そんな卑怯な方法で占領した地域を「自国領土」と言ってはばからないロシア政府にへらへら笑っているんじゃない。