明治38年5月27日、日本連合艦隊は対馬海峡でロシアバルチック艦隊を捕捉し大勝利をおさめた。もちろん我家は国旗を掲揚し先人たちの労苦に敬意を表する。
夕べ、どうしても気になることがあって書庫にもぐった。確か、あの本がどこかにあったはずなのだが……。
探すこと15分、ありましたぞありましたぞ。哀川翔と北野武に踏んづけられて、その下に隠れておりました。
河本準一『一人二役』(ワニブックス)である。大ベストセラーになった『ホームレス中学生』よりも4カ月早く出版したのだが、残念ながらあまり売れなかったようだ。
私小説という触れ込みだが、ほぼ河本の今までの人生をなぞっている。母親が、父親の役もこなしながら子育てをしたというありきたりの親子物語でしかなく、内容はスカスカだった。さすがワニブックス。
帯には《全国の母子家庭に告ぐ、「環境を恨むな」》と書いてあるが、河本には「環境に甘んじるな」と言いたい。本の巻末に、河本直筆の母親あての手紙が添付されている。その中に、母親がいまだに煙草を吸って、酔っぱらうまで酒を飲み、足しげく美容院に通っていることも吐露されている。また、本の中には、河本が親族24人を引き連れて2泊3日の旅行に行った話なども書いてあり、なんだか、とても裕福そうだった。
久々に読みなおしてみて――少し読んで、面白くなかったので止めてしまったのでほとんど読んでいない――やはり、河本は確信的に、生活保護を受給していたんだなと思った。手紙の中に「美容院代を送る」と書いてある。そして、謝罪会見では、「福祉事務所の人と打ち合わせをしていた」とも語っている。状況をすべて把握した上で、高額所得者が親に生活保護を受給していたことは、極めて問題だと思う。「もらった分だけ返します」では済まないのではないか。
脚本家の林秀彦がこんなことを言っている。
「日本以外の世界では、ユダヤ人がパレスチナに移住した西暦・紀元前1880年からアメリカ大統領リンカーンが暗殺された1865年までの約3700年の間に1万回の戦争が起きたのである。その間8000回の平和条約が各紛争当事国同士で結ばれ、その条約は平均2年で破られている。日本はどうかというと、蘇我・物部の争いから西南の役まで50回しか『戦い』を経験していない。『戦争』と呼ばれ出してからは、日清、日露、日中、大東亜とわずかに4回でしかない」
アングロサクソンや支那人は戦争に明け暮れて歴史をつくってきた。そして、日本人は戦争に未経験な状態で、とくに世界の帝国主義に巻き込まれる直前まで、江戸太平楽のぬるま湯のなかに260年も浸かっていたのだ。
そんなノーテンキな国民が、明治以降、4回の対外戦争を経験し3勝1敗だった。3つ先に勝っている。1つ落とした。プロ野球で3勝1敗なら善戦でしょ。しかし、日本人は最後の1敗に引きずられた。もともと戦争経験の薄いお国柄なので、国民はどん底まで落ち込んでしまった。サヨクはここに目をつけて、戦後60年の間に日本人を骨抜きにしてしまった。これが、ソ連高官に「社会主義で成功したのは日本だけだ」と言わしめることになる。
その骨を抜かれた日本人の一人が、前述の河本準一ということになるだろう。
芸人だから、テレビや舞台でへらへらしていてもいい。それで金を稼いでいるのだから当然だ。しかし、「オレは芸人だが、お恵みや施しは受けないぞ!」という強い気概を失ってはいけない。
おっと、そろそろ国旗を掲揚する時間だ。
「祝!日本海海戦勝利」