世のためにつくした人の一生は美しい その2

(上から続く)
 幕末の大坂に、緒方洪庵という医者がいた。彼の言葉を、司馬遼太郎の文章から引く。
「医者がこの世で生活しているのは、人のためであって自分のためではない。決して有名になろうと思うな。また利益を追おうとするな。ただただ自分をすてよ。そして人を救うことだけを考えよ」
 司馬さんが、子供たちにあてた『二十一世紀に生きる君たちへ』の後半に載っている「洪庵のたいまつ」の中にあるフレーズである。
 事がここにまで至れば、清水社長のとる方法はこれしかなかろう。
 清水社長がこの世で生活しているのは、人のためであって自分のためではない。もう己の利など考えても仕方がない。ただただ自分を捨てよ。そして人を救うことに全力をあげられよ。
 潔い出処進退、これを示すことが東電トップの今直ちにすべきことではないだろうか。
 そして、清水社長が、そう変貌を遂げたら避難住民も彼を責めないでほしいと思う。罵詈雑言を浴びせたって何の解決にもならないのだから。