災難は忘れていなくてもやってくる その2

(上から続く)
 15分待っても電車はうんともすんとも言わない。車内放送は同じフレーズを繰り返すのみである。人はどんどん増えてくる。出ているはずの快速電車がホームにいるのだ。みんなどんどん電車に乗り込んですし詰め状態になりつつある。
 ワシャは、いつまで待てばいいのかわからない状況でぼーっと待つなどという呑気なことはできない性分なので、電車を降りて改札口にゆき、そこにたむろしていた駅員に運転再開の目途を確認した。
「そんなこと僕らにもわかりませんよ」
 とへらへらと笑っている。
 それもそうだろう。5キロ先で起きたばっかりの事故のことを改札の兄ちゃんが状況把握しているわけがない。
 ワシャは改札を出るとまっすぐタクシー乗り場に向かった。階段を降りるときに次男に電話をしておく。
「電車が動かない。タクシーで途中まで帰る。安城駅刈谷駅の中間地点の東刈谷駅まで迎えに来てくれ」
 要点だけを電報のように伝え、駅前ロータリーにあふれているタクシーに乗って刈谷駅をあとにする。ホームには先ほどまでワシャが乗っていた快速電車がまだ停まっている。それを見ながらタクシーは勢いよく走り出した。東刈谷駅までタクシーで10分程度、料金は1800円だった。東刈谷駅前では、さほど待つこともなく次男の車が滑りこんでくる。それに乗り込むと「鉄道沿いの道を走れ」と指示をする。停まっているホームライナーを確認したかったのだ。走ること5分、東刈谷の次の駅の三河安城を少し過ぎた田んぼの中でホームライナーは立往生していた。「事故でもあったか」と思って車から降りて、電車の前後を見回したが、そうでもなさそうだった。田んぼの真ん中で止まっている電車というのも珍しいので一応写真を撮っておく。
 自宅について午後11時だった。パソコンの前にすわって午後11時10分。JR東海のホームページにアクセスして状況を確認すると「下りホームライナー大垣1号に車両不具合が発生いたしました。このため、上下線で運転を見合わせていましたが、23時08分に上り線のみ運転を再開いたしました。そのため、上下線の一部の列車に遅れが発生しています。」とある。
 ああ、ようやく刈谷駅の快速電車も動き出したか。よかったよかった。
 ほっとして床についたのだった。

 それにしても2日連続で、この大幅な遅れはいったいなんだろう。大丈夫かJR東海