いい加減にしてよ

 昨日、昼から名古屋に出張した。三の丸で大きな会議があってそれに出席。午後3時過ぎには終了したので、同じ三の丸の中部地方整備局の1階にある政府刊行物センターをのぞこう……と思ったらなくなっていた。およよ。いつもこの界隈に来ると必ずと言っていいほど立ち寄って、各省発行の統計や政府関係の書籍を物色するのが楽しみな場所だったのに。
 これが行政経費の削減というやつですかね。この辺りには、県庁、名古屋市役所、各省庁の出先機関、新聞社、裁判所などが林立している。官公庁の街の中にあって貴重な情報をあつかう特殊な書店であった。採算が合わないからといって、なくしていいものではないと思うがどうでしょう。

 その後、帰路につく。地下鉄に乗って金山に出る。そこでJRに乗り換えるのだ。3時半ごろだったと思う。快速を待つ乗客がホームにあふれている。ワシャはその最後尾に並んでいた。その時に場内アナウンスが流れた。ヒステリックで早口な甲高い若い男性の声だった。
「15時22分頃、野田新町駅構内で、人が列車に接触したため、上下線の一部の列車に遅れが発生しています」
 季節が季節だけに「自殺だな」と直感する。たぶん「接触」などという生半可なものではあるまい。それでも、野田新町の手前にある刈谷まで辿り着ければなんとかなる。少し遅れてもいいので、電車が入ってくれば普通でも乗ってしまおう、そう考えた。
 しばらくして再び場内アナウンスが入った。
「只今より、名鉄による代行輸送を行います。代行輸送を利用されるお客様は、JR窓口にお出でください」
 愛知県はほぼ並行して、JRと名鉄が走っている。とはいえまったく横に並んで走っているわけではないので、豊橋まで行けば同じ駅になるけれど、その途中はいささか不便ではある。
 まもなく多くの乗客が動き始めた。「刈谷、あるいは大府まで行ければ……」という考えが甘かった。「名鉄に変更しよう」と思い直した時はすでに遅し。JR改札からコンコース、階段にまで代行輸送を求める乗客で行列ができていた。どうだろう、300人、あるいは500人を超えるか。なにしろ2ホーム分、それも待たされていたので4列車分の乗客が行列となっている。
 もちろんワシャは並ばない。代行証明などもらっていては時間の無駄だ。JRからの乗り換えのための名鉄の改札がJR構内にあるので、そこでサッサと切符を買って改札を通ろうとした……のだが、自動改札機に止められてしまった。駅員に「どうして?」と切符を示すと、「JRのトイカも一緒に通すように」指示された。でね、一緒に通したんだけれど、やっぱり通れない。名鉄の駅員は「JRの窓口でトイカを書き換えて」という。それはいいわさ。でも、ワシャは正規の名鉄の切符を持っている。それで改札を通れないの?
 ワシャの後に、やはり同様に名鉄の切符をもったJRの乗客が並び始めた。名鉄の駅員は、自動改札をあきらめて、切符にハンコを押して通してくれたのだった。ありがとう。
(つづく)