山中光茂さん(松阪市長)の講演 その2

(上から続く)
 山中さんは、こんな事例を示された。
 2009年1月の選挙で現職を破って山中さんが市長に就任した。前市長の時、すでに市庁舎建設が動き出している。そのことについて市の建設部門のレクチャーを受けるとこういう話をする。
「現在の市庁舎は耐震基準を満たしていません。これに耐震工事を施すと33億円の費用が必要です。新たに庁舎建設をすれば50億円がかかります。ただ合併特例債が使えますし、その分は交付税措置されますので、新庁舎建設のほうがお得です」
合併特例債を使うためには、3月議会に上程しなければ間に合いませんので早速議会のほうと調整に入りたいと思います」
 これに対して山中さんは「待った」をかけた。合併特例債が使えずに市の予算の持ち出しになるとしても、もう少し議論を深めたほうがいいと感じたからである。
 担当部長は、深夜、山中さんの自宅を訪問して「議会上程」を懇願したそうだが、山中さんは「ま、いいじゃないですか。もう少し議論しましょうよ」と受け付けなかった。
 結果として、山中さんのこの勘は当たった。議論に議論を重ね、当初に33億円かかると言っていた耐震工事は、プロポーザル方式を採用し、たった4億円で済ませてしまったのである。こういうことなのだ。
(下に続く)