御園座「二月大歌舞伎」 その1

 来月の御園座海老蔵は出ない。海老蔵の代わりに誰か来るのかと楽しみにしていたのだが、補充はなかった。
 座頭が團十郎、それを左団次、梅玉福助七之助が補佐する。ううむ、顔ぶれが地味だ。やっぱり海老蔵の存在は大きい。

 さて、今回かかる狂言は、昼の部が「芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」、「勧進帳」、「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」の3つ。夜の部は「義経千本桜」、「二人道成寺(ににんどうじょうじ)」である。
 むむむ、演目も地味だわさ。「勧進帳」も弁慶の團十郎海老蔵の富樫左衛門で観たかった。でも仕方がないので、梅玉の富樫、七之助義経を堪能することにしよう。実は梅玉の富樫は初めてなので、どんな富樫になるのか楽しみだ。
 そうそう富樫役者としては、先般、鬼籍に入られた富十郎丈がよかった。團十郎弁慶との表面を取り繕ってのにらみ合い、探り合いは、物語の展開を知っているにも関わらずハラハラする。富十郎丈小柄な方なのだが、それが大柄の團十郎を向こうに回して見劣りしない。存在感のある役者がまた一人逝ってしまった(寂)。

 今回の御園座には昼夜ともに「義経物」が掛かる。とはいえ夜の部の「義経千本桜」に義経本人は出てこない。主人公はいがみの権太というやくざ者である。いかにも江戸っ子といった風情の権太であるが、時代背景は平安末期、場所は吉野山の西方(現在の奈良県吉野郡あたり)ということで、そういったゴチャゴチャ感、混沌としたところが歌舞伎の醍醐味と言えなくもない。
 歌舞伎は歴史を踏まえてはいないが、それでもこの時期に義経が吉野あたりに現れるのもおかしい。すでに兄の頼朝から追捕されており、あちこちを転々と逃げ回っている状況なのだ。
 あるいは逃げて逃げて、この頃、越前の安宅関に到着し、その警護の物々しさに驚いていたのかもしれない。その、安宅の関突破大作戦が「勧進帳」というドラマになる。
 うふふ、こんな風に歌舞伎のことを書いていたら、早く観たくなってきてしまいましたぞ。
(下に続く)