楽しい法事の過ごし方 その2

(上から続く)
 葬式や法事になると必ず思い出す映画がある。
男はつらいよ」第32話「口笛を吹く寅次郎」だ。舞台は岡山県高梁市、そこで寅次郎はにわか坊主になって騒動を巻き起こす。こんなシーンがある。
 ある日、寺の住職が二日酔いで法事に行けなくなってしまう。義を見てせざるは勇無きなり。寅次郎が住職のピンチヒッターということで勇んで法事に出かける。その法事の前に檀家の旦那(長門勇)と絡むシーンがある。やってきた寅次郎坊主を旦那が呼び止めて、「ありがたーいところを手短にやっておくれんさい」と頼むのだ。
 この言葉が頭に残った。だから葬儀や法事の時には、必ずこのシーンが脳裏によみがえり、小さな声で「ありがたいところを手短に」と呟くのだが、そうは問屋が卸してはくれない。昨日の宗派も読経が長いので有名な宗派である。まず1時間は覚悟しなければならない。
 でもね、ワルシャワは前回の初七日で学習をしている。経が長いことは先刻承知の助で、ちゃんと対策を練ってきているのだ。
 まず、ポジション取りが重要である。ワシャは参列者の一番左端に坐った。庫裏は本堂の右手にあるので、出入りする人からももっとも遠い位置で、ワシャの左側には誰もいない。そういう状況を作った。その上で座りのいいバッグを持参しているので、それを右膝の前に縦に立てる。バッグを遮蔽物にするわけだ。その蔭で文庫本を開くと参列者からはワシャの手元が見えない。パラパラとページを繰っても、経本を見ているようで怪しまれないときたもんだ。苦痛の読経の時間は快適な読書タイムとなった。
「なんと罰当たりな!」
 と思われる方もおられようが、そこはちゃんと考えてありますぞ。持参した本は岩波文庫の『法華経』の上巻。法華経を聴きながら、『法華経』を読む。まさにライブではあ〜りませんか。これなら仏様も許していただけると思うのだった。