動的防衛力の是非

 夕べ、某所で宴会。メンバーに現役の佐官クラスの陸上自衛官数名が入っていた。たまたま「新防衛計画大綱」が17日に閣議決定されたところなのでその内容について議論を交わす。
 佐官たちに共通していたのは「今回の大綱には不満」というものだった。何故か。それは限られた予算の中で南西諸島防衛に重点を置くために、「動的防衛力」という考え方が取り入れられたことによる。
「動的防衛力」とはなにか。民主政権が自衛隊全体の弱小化を進めているわけだが、自衛隊としては、なんとか南西諸島の備えを充実するために、考え出された苦肉の策である。全国に展開する陸上自衛隊を整理・縮小して、海上・航空の防衛力を増強する。この転換を図らずをえない。これが陸自にはおもしろくないのだろう。
 日本にとっての仮想敵国はロシアから支那中国に移っている。すでに我が国固有の領土だった北方四島はロシア領になり、取り戻すことはほぼ不可能になった。日本が国境紛争に敗北したことにより北辺に緊張はなくなりつつある。
現在、国境緊張が北海道ではなく南西諸島にあることは、万民が知るところだ。そうなると北海道の大地を駆け回り、海岸から上陸してくるロシア軍を撃つ陸上自衛隊の活躍の場がなく、であるなら、陸自の予算を削って東シナ海での戦闘の主力になる護衛艦、潜水艦の増艦を進めることはまことに合理的である。
そのあたりも解かっていながら、話を「動的防衛力」に振ったのだが、佐官の皆さんは一様に苦い顔をしておられた。現場としてみれば、人員や装備の削減が厳しいのだろう。
「いずれ陸自にもいい風が吹くよ」
 と慰めてはみたものの、これから当分、海自・航空へのシフトが続くだろうね。