怒りの仏たち その1

 2日間、奈良を呑みつくした。でも、その合間をぬって仏様にも会ってきた。有名なところでは薬師寺金堂の薬師三尊像である。680年、天武天皇は皇后の病気平癒のために薬師寺を建立発願した。天武の祈りが通じたのか、まもなく皇后の病気は平癒するのだが、そのかわり天は天武の命を召された。薬師寺は建設中であったが、天武の意志を継いで、皇后(持統天皇)が698年に完成させている。その後、平城遷都にともなって現在の地に移ってきた。
 それにしても仏様たちは美しい。とくに脇侍の日光・月光菩薩が優美だと思う。薬師如来をはさんでむかって右に日光、左が月光なのだが、どちらの仏様も中尊の薬師如来のほうに腰をくねらせている。この角度が艶めかしい。これは大講堂の弥勒三尊像にも言えることで、威厳のある重厚な彌勒如来をはさむ両脇の菩薩の腰は中尊にむけてくねっている。ううむ、白鳳仏師の力量、生半可なものではない。
 また、今回のまほろば散策では、怒りの仏たちもテーマの一つに掲げた。薬師寺では彌勒三尊をお守りする四天王、東院堂で聖観音を擁護する眷属たちの怒りの表情がいい。時代は鎌倉、質実剛健の武士の風貌が如実に現れている。ワシャはこういった強い仏様が好きなんですね。
(下に続く)