破壊と建設

 名古屋市議会の解散を求めたリコール署名が必要数に届かない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101124-00000032-maip-pol
 河村市長は「尊い署名を無効にしたことは極めて不条理。恐るべき民主主義の危機と言わざるをえない」と市選挙管理委員会の審査にケチをつけた。
 尊かろうが尊くなかろうが、ルールを逸脱して集めたものは無効だ。それに名古屋市議会は今度の4月に選挙だから、現議員の任期は4カ月ほどで終わる。交付団体である名古屋市の貴重な財源を使って大騒ぎすることじゃない。
 自治体の中でも「選挙管理委員会」をつかさどる部署は、法律に詳しい職員を集めている。「選挙」がデリケートなだけに予断とか恣意を入れてはいけないので、アイディアマンよりも石部金吉が求められる。そこが出した結論である。署名簿の縦覧が始まってもおそらくこの結論はくつがえるまい。
 署名集めに走った支援団体が杜撰なのである。支援団体はモンスターシチズンと化し、各区役所に殺到するだろうが、そもそも呼びかけ人の河村市長が迂闊な人なので、この結論は止むを得ない。罵詈雑言を浴びせられる担当者のことを思うと心が痛む。

 少し前に書いたけれど、名古屋市が河村市長を戴いてから職員の士気が落ちてきた。市長に近いところにいる職員の中には精神的に病む人も出はじめている。河村市長の理想はいい。しかし、理想の実現には時間が掛かる。じっくりと腰をすえて、反対する人々には反対するだけの理屈があるのだから、それを一つ一つ解きほぐして自分の理想に近づけていく。それが政治だ。思いどおりにならないからといって、その都度ちゃぶ台をひっくり返していては部下がもつまい。そんな短絡的な首長には部下はついていかない。

 阿久根市竹原市長も苦戦している。
先月の25日に九州・沖縄で行政事件に携わる弁護士25人が竹原市長に対する背任容疑の告発状を鹿児島地検に提出している。違法な専決処分を繰り返してきたことで、足元に火がついた格好だ。
また、竹原市長解職の是非を問う住民投票も始まっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101117-00000292-mailo-l46
 竹原市長も河村市長も、「民意民意」と口走るが、その民意も一部の声でしかない。民意を政治に反映させるためには、面倒くさい手続きを踏まなければいけないのだ。ご両所とも「破壊者」としてはうってつけだが、行政のトップは「建設者」でなければならない。そのあたりが理解できないと何年かかろうとも阿久根市名古屋市も良くなるまい。