地大物博人多 その3

(上から続く)
 地が広く、物が豊かにあり、人が数多存する彼の国は、何千年ものあいだ何度も何度も国を壊し、その度ごとに一から国を造り、他民族を虐殺し、その肉を食らい、文化を破壊し、時の権力者に都合の悪い過去の歴史はすり潰すようにして抹消してきた。タウンゼントが見たとおり、日本人とはまったく別の価値観を持つ人種なのである。顔貌が似ているといっても、地球上でもっとも遠い種だと思ったほうがいい。
 すでに中国の歴史研究家は「明治政府による琉球併合も、戦後の沖縄返還国際法上の根拠はない」と言いだしている。「たかじんのそこまで言って委員会」で、孔子の子孫の孔健が誘導に引っ掛かって思わず「沖縄は中国のものあるよ」と漏らしてもいるのだ。

 京都大学の中西教授は言う。
《中国は自国の力の増大に任せて、封建時代の中華的帝国秩序、少なくとも「宗属」を論拠とする前近代の理論を持ち出しているに過ぎない。それによって、正統的な近代的論理を否定しているのである。》
 中華帝国を近代国家として見てはいけない。オリンピックや万博を開催したからといって普通の国などと思ってはいけない。未だに中世の闇から抜け出せない未熟な国家体制が超近代兵器で武装している、そう考えれば当たらずといえども遠からずである。
 司馬遼太郎は『歴史の交差路にて』に中でこう言っている。
中国文明は異様な文明ともいえますね」
 その理由として、中国は古代においてすでに近代精神のようなもの、自由主義とか合理主義とか博愛主義のようなものが醸成されてしまい、その後、時代が下れば下るほど、近代精神が後退していると指摘している。こんなことを言ったので、司馬さんは中国で「右翼作家」のレッテルを貼られてしまう(笑)。

 多くの賢人たちが「中国は危ない」と見ている。どうしてそれを日本の為政者や経済人は見抜けない。拝金主義の毒が総身に回ったか……。