終戦記念日は4日前だ その2

(上から続く)
 そこに火事場泥棒スターリンの野望を担ったソビエト軍が戦闘を仕掛けてきたのである。不意をつかれた日本軍ではあった。そして大詔により、これで日本に帰り、家族に会えるとほっとしているところを襲撃されている。闇討ちといってもいいだろう。
 何人もの若者が「この戦闘で死ねば、本土で待つ愛しい人に会えなくなるかもしれない」と思ったに違いない。くどいようだが、終戦は4日前である。しかし、襲い掛かってくるソビエト軍にむざむざ殺されてなるものか。堤師団長の命令の下、スターリンの軍隊を迎え撃つことになる。
 そして、占守守備隊は圧倒的な勝利を収めた。ガダルカナルで、サイパンで、フィリッピンで、沖縄で、敗戦に次ぐ敗戦で辛酸をなめさせられていた日本軍が最期に飾った大勝利だった。
 その後、勝った第91師団は、負けたソビエト軍武装解除させられ、あの地獄のシベリアへ送られることになる。

 このソビエト軍による占守島侵攻は明確な「戦争犯罪」である。もちろん、この占守島以後の千島占領、日本の国土である北方四島への侵攻も国際ルールを完全に逸脱している。日本は、そういった仕打ちを受けてきたということだけは知っておいたほうがいいだろう。
 終戦が伝えられ、故郷に生きて帰れるんだと実感した兵士たちが、理不尽な敵の振る舞いの前に、もう一度、銃を取って立ち上がる苦悩がわかりますか。でも、彼らは闘い、そして15年戦争の最期を勝利で飾ったのである。

 蛇足になるが『終わらざる夏』にキクと夏子という少女が登場する。占守島にある缶詰工場で400人の女子挺身隊が働いているのだが、その中の一員である。満州樺太ソビエト兵に遭遇した婦女子がどういう運命をたどったかは、あえて言わないが、占守の兵士たちはキク、夏子を始めとする400人にのぼる女子挺身隊を守ることができたのだろうか。武装解除してしまえば、男も女もソビエト兵の思うままだ。

 65年前の今日、最果ての占守島で、猛烈な戦闘が繰り広げられている。戦闘が終了するのは明後日の朝である。