つながる

 昨日の朝、新聞を読んだ時には見落としていた。帰宅後、夕食をとりながら、あらためて新聞をくつろげていると、国際面のすみっこに小さな記事を見つけた。
「旧日本兵の遺骨か」。これも小さな見出しである。内容は《千島列島のシュムシュ島(占守島)などで見つかった旧日本兵とみられる31人の遺骨が11日、ロシア・サハリン州ユジノサハリンスクで日本政府に引き渡された……》というもの。
 11月10日の日記で、寝室に置くための本を買った話をした。その中に『司馬遼太郎からの手紙』(朝日文庫)があって、それをたまたま11日の夜に読んでいた。その173ページに司馬さんが秋田に取材に行った際に出会ったタクシーの運転手の話があった。
《「空港で乗った個人タクシーの矢倉竹治氏も、秋田ふうの人柄らしい。温厚で、えもいえぬ含羞がある。大正十年生まれで、私より二年先輩である。この年代はよく死んだ。(中略)『敗戦までおられたのは、どこですか』『占守島でございました』その島の名をきいて、鼻の奥に硝煙がにおいたつ思いがした」》
 新聞にしろ本にしろ、キーワードがつながると楽しい。「占守島」については、浅田次郎が『終わらざる夏』(集英社)に書いている。また、昭和44年発行の『昭和史の天皇』(読売新聞社)の第7巻にも「千島」という章があって、そこに占守島で戦った方々の貴重な証言が載っている。それらを読むと、当時、占守島には終戦時に考えられないような兵力が手つかずで集結していたのだ。そこに約束を破棄したスターリンの兵が突っ込んできた。この戦いは日本軍の勝利であった。しかし、戦争は終わっており、不本意ながら日本軍は降伏せざるをえない。
 つながったのがうれしくて、ここから噺を膨らまそうと思ったが、出勤の時間になってしもうた。