朝のひと時 その1

 午前4時40分、東の地平近くがうっすらと朱を帯びてくる。夜明けだ。夏の初めの頃と比べると、日の出はずいぶんゆっくりになった。
 虫の声が複数になってきている。「ギギギギ」に「リリリリ」が加わった。
 遠くの幹線道路を走っていく暴走バイクの爆音がとどく。あの爆音の鳴らし方というのは20年前と寸分と違わぬが、「こう鳴らす」というような伝統があるのだろうか。意外にオリジナリティのないやつらだったりして。
午後4時50分、今しがた、庭先のポストに新聞の投函される音がする。この時間帯は朝日新聞だ。中日新聞の配達員はもう少し早い。
 新聞をとりに庭に出る。やっぱり庭のほうが涼しい。室内はまだ昨日の日中にためこんだ熱がこもっているようだ。
(下に続く)