羽生の攻撃 その2

(上から続く)
○よく、何手先まで読むのか?という質問を受ける。将棋の可能性としては80通り、これを10手先までシミュレートしていたら日が暮れる。
○最初は、直感(第一勘)を使う。ぱっと見て識別する。判断する。これが直感。直感で80通りを2〜3つに絞り込む。残りの77は見た瞬間に捨てる。
○2〜3つに絞り込んで読みを始める。ここで役に立つのが、「直感」「読み」「大局観」だ。
○「直感」と「ひらめき」は違う。「直感」は論理的に説明できるもの。「ひらめき」は根拠のないもの。
○15歳でプロになったときには、この「読み」ばかりだった。経験がないので、「直感」「大局観」は持ちようがなかった。
○「大局観」とは何か?反対語は「木を見て森を見ず」、具体的なものを見るのではなく方向性のようなものを見極めるもの。
棋譜を記憶するのは難しくない。ルール、秩序性、セオリー、定石などを踏まえていれば記憶するのは簡単だといってもいい。
○しかし、幼稚園児同士の将棋を見ていたが、これは覚えられなかった。カオスと言っていい。次にどんな手が来るのかまったく予測もつかなかった。
○コンピュータが発達し、過去の勝負がみんな棋譜として見ることができる。でも、手軽に簡単に手に入る情報は、やはり手軽に簡単に脳から消えていってしまう。大切なことは、五感を駆使して記憶すること。目だけでは弱い。きちっとした記憶にならない。
○相撲の立会い、1秒に満たない時間で、いい体勢になれるかどうか。両まわしを取られてしまえば、もうどうすることもできない。一瞬の間で、直感と大局観を駆使して、いい体勢に持ち込む。
○結果が出ないとき、不調のせいにする。でもね、3年も不調が続けば、それはもう実力といっていい。これは実力がないだけだ。けっして不調ではない。こういった時は、努力して努力してその状況から脱出するしかない。
○本当に不調の時は、気分を変える→生活習慣を変える→趣味を始めてみる→何かを止めてみる。これで不調を乗り切る。
○最近の若いアスリートは、「楽しんでやりたい」というような意識の選手が増えている。厳しい状況の中でもリラックスして、落ち着いて、楽しんでプレーしている。これならば、いいパフォーマンスができるだろう。

 というような話でした。なんだか仕事に役に立ちそうなそんな気がしてきましたぞ。