名古屋駅大混雑 その2

(上から続く)
 改札を通って、構内通路を東海道本線上りのホームに向かう。その通路に作業着を着てサングラスをかけた小柄なオッサンが千鳥足で歩いていた。
 すれ違う女性に「バクワヤルオ」(たぶん「バカヤロウ」と言っているのだと思う)などと言っている。酔っているな、このオッサン。昼間から酒を飲んでいるとはいい身分じゃないか。こういった輩とは、関わらないほうがいい。そそくさと脇を抜けようとしたら、オッサン、気配を感じたのか、ワシャの方を振り返りおった。オッサンが、ワシャをジロリと睨んだかどうかは、サングラスをしているので判らないが、ワシャのほうに近づいてきてこう言った。
「目ン玉が四つあるのが偉いのか……」
 咄嗟にオッサンが何を言っているのか理解できなかった。後で考えれば、ワシャはメガネをかけているので目が四つと表現したのかなぁ……。オッサン、酔っているにも関わらず、勢いよくワシャに近づいてくる。あんまり近づくと接触してしまうでしょ。危ないよ。ほら、避けきれずにぶつかってしまった。あららら、オッサン、通路にぺたりと座り込んでしまった。ワシャのヒジが鳩尾にでも入っちゃったかな。心配だったので「オジさん、大丈夫?」と声をかけると……
「うるさい!」
 とお元気なご様子だったので、間もなく入ってくる快速電車に乗らなければいけないワシャは先を急いだのだった。それにしても名古屋駅は混んでいた。めでたしめでたし。