隣人(読書会外伝)

 話は少し戻る。23日の朝、三河安城駅まで送ってもらうために嫁と一緒に玄関を出た時のことだ。ワシャの家の東隣に独居の老婦人が住んでいるのだが、その方が通りを箒で清掃しておられた。
 会釈をすると、おばあさんは、深々と頭を下げられ「おはようございます」と返してくれる。上品で気持ちのいい方で、いつもワシャん家(ち)の前の道路まで食いこんで掃除してくれるのじゃ。ありがたい隣人だと思っている。

 新幹線はがらがらだった。三河安城は名古屋の一駅東なので、東京方面に急ぐ人は名古屋でひかりに乗ってしまう。だから静岡あたりまでは窓にもたれて静かな読書に耽ることができる。
 今日も静岡からは車内が混みだした。運がよけれは上品そうな女性が坐ってくれるのだが、この日の隣人は外れだった。60前後の油ギッシュなメタボオヤジだった。ワルシャワだってオヤジのクセにと言われそうだが、ワシャはちゃんと隣の人に気を使う気配りオヤジなのだ。
 このオジさん、なんの挨拶もなくドカッと坐ると、真ん中の肘掛に太い腕を伸せてくる。完全にワシャの領土を侵犯してまっせ。その上、新幹線が新富士に到着する頃には、オジさん、鼻提灯をふくらませているのじゃ。助けてくれー!夕べは読書会のメールの確認や下準備でほとんど寝ていない。そのワシャの横で爆睡するとは、なんという無神経なオッサンだ。その上、三島辺りから鼾もかきはじめた。このために神経質なワシャは読書に集中できない。読書会の参考文献、神田敏晶YouTube革命』(ソフトバンク新書)をまだ読んでいないのじゃ。
 仕方がないので、ワシャはおもむろにキャリーバッグからメガホンを取り出し、オッサンの耳元で「静かにしてくださ〜い」と囁いた。オッサン、びっくりして飛び起きたのだった。めでたしめでたし。

 なお、読書会会場での隣人はガッキィ仲間のHさんだったので、こちらはオッケーでしたぞ。(つづく)