それは素敵な送別会

 年度末のこの時期、どこの会社でも送別会が花盛りだろう。
 記念写真を撮って、退職者の経歴の紹介があって、送別の辞、花束贈呈、記念品の贈呈、退職者の挨拶、乾杯、宴会と続く。今の会社に入って、ウン十年、毎年毎年、退職者の席に座る人が替わるだけで、代わり栄えのしない送別会が何百回と繰り返されてきた。

 今年度末をもって先輩のTさんが退職される。大変、お世話になった方なので、ぜひ送別会をやりたいと申し出たが、やんわりと断わられてしまった。人望の篤かった人なので、多くの社員が送別会を希望していた。が、お座なりの送別会は現在所属している部署のみとし、その他の送別会はすべて断ると決められたそうで、強く固辞された。
 かつてそんな社員を見たことがなかった。格好いいと言えば格好いい。でも、お礼を言いたい後輩がたくさんいることも事実なんですよ。Tさん。
 そのTさんが「お礼の会」を開催すると言いだした。従来の送別会とは逆に、退職者本人が今まで支えてくれた後輩に対しお礼を尽くしたい、というのだ。

 その会が昨日あった。隣町のライブハウスを借り切って、Tさんの親しいシンガーソングライターを招いてコンサートを開いた。もちろん歌手の手配、案内状の発送、会場の手配、準備、何から何までTさんがやられた。飲み放題、食べ放題にコンサートまでついて、会費が3,000円ぽっきりである。Tさんの持ち出しは生半可な金額ではない。だから、「参加者一同から何らかのかたちでお礼の気持ちを表したい」と申し出たのだが、「参加してくれることがお礼の気持ちになるので、一切の心配はしないでほしい」とこちらも固辞された。う〜ん、なんと頑固な人だろう。
 詳細は言えないが、素晴らしい集いだった。かつて参加者が一体となって感動する送別会があっただろうか。コンサートが終了し、主催者であるTさんが壇上に立ってお礼の挨拶をされ最後に「ありがとうございました」と締めくくった時、会場から割れんばかりの拍手が起こって、その拍手はずっと続いて、いつまでも鳴り止まなかった。シャイなTさんは、少し照れながら壇上で微笑んでいた。

 よおし!ワシャも退職の時には送別会をみんな断わるどー!!
 そんでもってワシャ主催で退職記念コンサートをやるどー!!
 どうしようかな、知り合いにシンガーソングライターはいないので……あ、そうだ!バグパイパーの加藤健次郎さん
http://www.casa-classica.jp/weblog/cat15/post_988.html
にでもお願いしようかなぁ。ずいぶん先の話になりますけど。